日本の薬価は高いのか?

誤報:「日本の薬価が高い」 

「日本の薬価が高い」という誤った認識を持つ人は少なくない。 情報の発信元は、全国保険医団体連合会であり、そこが調査したデータでは「日本の薬価が高い」ということになっている。 ここでは、そのデータが信用できるかどうかを検証したい。

偏った調査方法 

まず、全国保険医団体連合会の調査が極めて偏った調査方法であることを指摘しておく。

品目の偏り 

そこで、2010年の日本の推定市場規模で上位約100品目を選び薬価の国際比較を実施した。

【2】調査方法

(1)比較対象とした医薬品の品目、比較国および年次売上高で上位100品目は、「製薬企業の実態と中期展望」(2011年7月30日発行)に掲載されていた「10年度医療用医療品国内売上高ベスト100(内資+外資)」に記載されていた、2010年の日本の推定売上高上位100品目とした。 日本の薬価との相対価格を比較する対象とした品目は、日本以外(英・仏・独・米)の3か国以上で使用され、薬価が判明したものとした。

月刊保団連臨時増刊 No.1087 2012「薬価の国際比較調査にもとづく医療保険財源提案(薬価の国際比較-2010年薬価の比較調査報告書-)」P.38

「薬価の国際比較」をするにも関わらず、世界の売上上位品目ではなく、「日本の推定売上高上位100品目」を選ぶのでは眉唾物である。 医薬品に限らず、一般に、需要が大きいものほど値段が高くなる傾向があるため、この調査方法では日本の医薬品が他国よりも高い価格になりやすい。

また、どの国における売り上げ上位品目を選択するかによっても,結果は異なってくる.

薬価の国際比較—医療用医薬品の内外価格差をどう考えるか ー 病院57巻9月P.794

よって、この調査方法で「日本の薬価が高い」という結論を出すことはできない。 もちろん、世界の売上上位品目と日本の売上上位品目に大差がない場合は、国の選択による差は誤差程度に留まることが予想される。 しかし、全国保険医団体連合会が公表した同じペーパーに日本と他国の売れ筋医薬品に顕著な差があることが指摘されているので、誤差がかなり大きいことは容易に予想できる。

また独では10年未満の新薬が占める薬剤費は総薬剤費の10%であったが、日本では約50%を占め、日本の高薬剤費の構造は、高薬価の上に処方傾向に新薬依存があることが判明した。

月刊保団連臨時増刊 No.1087 2012「薬価の国際比較調査にもとづく医療保険財源提案(薬価の国際比較-2010年薬価の比較調査報告書-)」P.1

同じペーパーの中に記載されている以上、知らなかったという言い訳は通用しない。 ドラッグラグ・未承認薬問題も合わせて考えれば、日本と他国の新薬の承認状況も違うため、もっと誤差は大きくなるだろう。

「日本の薬価は国が決めているから市場原理の影響を受けない」と主張する人もいるかもしれないが、それは次の2つの理由により反論として成立しない。

  • 薬価を政府が決めていない国では、市場原理で薬価が決まる
  • 日本でも、市場原理により薬価が下がる制度がある(逆に、市場原理で薬価は上がらない)

まず、市場原理で薬価が決まる国を調査対象に含めれば、「日本の売上上位品目」がその国の「売上上位品目」ではない場合、市場原理により、その国の薬価は相対的に低くなってしまう。 よって、「日本の売上上位品目」を選ぶ方式では、日本の薬価を相対的に押し上げてしまう。

また、日本の薬価は市場実勢価格に合わせて2年毎に改定されるため、市場実勢価格が下がれば、薬価も下げられてしまう。 しかし、この制度では、薬価が上がることはない。 よって、日本では、市場原理は、薬価が上がる方向には作用しないが、下がる方向には作用する。 現行の薬価基準制度について - 厚生労働省P.2「現行薬価基準制度の概要」を見ればわかる通り、この制度は保団連の調査が行われた2010年より前に導入された制度である。 よって、「日本の売上上位品目」を選べば、日本の薬価が下がりやすい品目を選択的に外すことになり、これも日本の薬価を相対的に押し上げてしまう。

比較品目数の少なさ 

「上位約100品目」では、市販品目の大多数が除外されるため、市場実態を正しく反映しないという指摘もある。

まず、どのような品目を対象にするかによって,結果が異なってくる. これまでの研究の大半は,比較的少数の薬剤を対象としており,薬剤の選択基準は必ずしも明確ではない. こうした研究では,薬価の内外価格差に関して総体的な結論を下すことは不可能であるし,時には価格差の大きい(または小さい)薬剤を恣意的に選択したとの批判を受けることも免れない.

比較的多数の薬剤を対象とした研究でも,各国における(あるいは世界市場における)売上高上位品目を最大で100品目程度を選定している場合が多い. これでは,大多数の市販品目(とくに後発品)が除外されてしまう.

薬価の国際比較—医療用医薬品の内外価格差をどう考えるか ー 病院57巻9月P.794

数量単位の偏り 

保団連の報告書の薬価は、標準単位(standard units)当たりの価格ではなく、物理量当たりの価格を比較しているようである。 これは医薬品の使用実態とかけ離れている。

3)含有量:

同一mg(g)数の薬剤があればこれを採用した。

②同一含有単位のものがなく、外国に別の単位(通常は高単位)の薬剤がある場合は日本に比較的近い高単位の薬剤の価格を採用し、日本の単位に見合うように比例配分した価格を計算で求めた。

月刊保団連臨時増刊 No.1087 2012「薬価の国際比較調査にもとづく医療保険財源提案(薬価の国際比較-2010年薬価の比較調査報告書-)」P.40

データを見ると、表9,10(P.56,57)では、薬価の記載がある品目は、2品目を除く全ての「比較製剤」の項にμg/mg/mL/IUによる数量が記載されている。

P.55-57の比較品目の表1、表9、表10を見ると、その「比較製剤」の項のほとんどに確定重量が書かれている。 つまり、これらは「同一mg(g)数の薬剤」を採用したか、あるいは、「日本の単位に見合うように比例配分した価格」が採用されているということである。 それは、すなわち、同一物理量における価格で記載されていることを意味する。

一方で、アメリカ商務省の調査報告であるPharmaceutical Price Controls in OECD Countriesにおいても、標準単位当たりの価格と物理量(重量)当たりの価格には大きな開きが見られる。

特許医薬品の価格(2003) Pharmaceutical Price Controls in OECD CountriesP.15

各国間の投与量の違いは複数の専門家により指摘されている。

1日標準使用量としてWHOのATC/DDDを使いましたけれども、これ自体が妥当であるのかといった問題も残っています。 日本は、ATC/DDDと比べると使用量が低い傾向と感じています。 したがって、診療ガイドラインの比較などの調査によって1日使用量の補正も必要と思われます。

第14回ヘルスリサーチフォーラム2007年度 薬価決定のあり方に関する国際比較研究 - 公益財団法人ファイザーヘルスリサーチ振興財団


新薬の日米間の用量比較

新薬の日米間の用量比較

ドラッグ・ラグ私たちが知っておくべき事・できる事 - NPO法人キャンサーネットジャパン


一般に,同一力価・同一容量あたりの価格で比較する場合が多いが,この際,両国に同一規格単位の存在する品目のみを比較するか,規格単位が異なるものについても同一力価に比例換算したうえで比較するか,という問題がある. 後者の場合,欧米の方が規格単位が大きい場合が多いので,これを比例換算すると欧米の価格が割安に見える傾向がある.

各国において1日常用量が異なるものについては,同一力価・同一容量同士の比較ではなく,各国における1日常用量について比較する方法もある(例えば,日本の1日用量3mgの価格と米国の1日用量6mgの価格とを比較する,といったことになる).

薬価の国際比較—医療用医薬品の内外価格差をどう考えるか ー 病院57巻9月P.794

「1日常用量が異なるもの」については「各国における1日常用量について比較する方法」もあるのではなく、新薬においては、「同一力価・同一容量同士の比較」は不適切であり、「各国における1日常用量について比較する方法」が最も適切な薬価の比較方法となる。 何故なら、新薬に占める最大のコストは開発コストであるからである。 新薬に占める医薬品の「1日常用量」当たりの開発コストは、全開発コストを販売期間における全患者の述べ想定使用日数で割ったものとなり、「同一力価・同一容量」とは関係なく決まる。 医薬品を適正な価格で販売するなら、原価計算方式では「1日常用量」(と全開発コストと販売期間における全患者の述べ想定使用日数)を元に価格を算定すべきであろう。 何故なら、「同一力価・同一容量」で算定しては、「1日常用量」が少ない場合に開発コストが回収できなくなり、逆に、「1日常用量」が多い場合には過剰利益を得てしまうからである。 「日本は、ATC/DDDと比べると使用量が低い傾向」があるなら日本のおける「同一力価・同一容量」を「1日常用量」で割った数値は大きくなるから、「同一力価・同一容量同士の比較」では日本の薬価が実態よりも割高に見える結果を生み出す。 そのような方法では適切な価格比較とは言えまい。 また、支払う側の立場で見ても、薬価とは「1日常用量」当たり価格であり、それに使用日数を掛けたものが医薬品費であるから、「同一力価・同一容量あたりの価格」は関係がない。

さらに、標準単位(standard units)は「1日常用量」と相関性が見込まれる。 以上の取引・処方の実態と比較すれば、当然、標準単位当たりの価格で比較した方が正確であろう。 だからこそ、 日医総研ワーキングペーパーNo.154 後発医薬品はわれわれを幸せにするか - 日本医師会総合政策研究機構P.13,14や製薬産業の将来像〜2015年に向けた産業の使命と課題〜P.146では、標準単位(standard units)当たりの価格を採用して、日本の新薬の薬価は安いと結論づけているのである。

諸外国と比較した日本の相対薬価 Pharmaceutical Price Controls in OECD CountriesP.15 月刊保団連臨時増刊 No.1087 2012「薬価の国際比較調査にもとづく医療保険財源提案(薬価の国際比較-2010年薬価の比較調査報告書-)」P.58

アメリカ商務省の調査結果における標準単位(standard units)の重量比を採用して保団連のこのデータを標準単位(standard units)当たりの価格に直すと、日本の薬価は、アメリカと比較して約0.33倍、ドイツと比較して約0.78倍、フランスと比較して約1.06倍、イギリスと比較して約1.1倍となる。 品目が違うのでアメリカ商務省の調査結果をそのまま当てはめるのは適切とは言えないが、保団連の調査結果が数量単位の違いによって大きく歪められている可能性は良く分かるだろう。

なお、以下の検証も同様のことを指摘していると思われる。

○保険医団体連合会における比較対象77品目の内、本集計においては、我が国において最も汎用性がある規格について比較することとし、海外において本邦と規格、剤型が異なるもの又は用途が異なると思われる品目については、国際比較の対象から除外した。

○その結果として、1カ国も比較すべき外国価格がなくなった10品目を除く、67品目を対象に国際比較を行った。

新薬の薬価における欧州との比較 - 中医協P.5

為替レート  

以下の検証では、採用された為替レートの問題も指摘されている。

○「外国為替の取引等の報告に関する省令」第35条第2号に基づき財務大臣が定める相場(日本銀行)における1平成24年(2012年)1月~12月(リーマンショック(平成20年(2008年)9月)以後)の平均値(相加平均)を「円高レート」として、2平成19年(2007年)1月~12月(リーマンショック以前)の平均値(相加平均)を「円安レート」として、用いた。

○「薬価の国際比較-2010年薬価の比較調査報告書」では、総務省・統計局・政策統括官(統計基準担当)・統計研修所のホームページのF貿易・国際収支の第7項(7外国為替相場及び外貨準備高に記載されている対顧客為替相場(売り値と買い値の中間値)の各月の平均値の幾何平均を年平均値(米1ドル87.16円、1ユーロ114.91円、1ポンド134.57円:以下、「平成22年(2010年)1月~12月期レート」)として、用いられた。

新薬の薬価における欧州との比較 - 中医協P.6

保団連の調査が行われた2010年は、リーマンショックの影響で為替レートが乱高下している時期であり、採用するレート次第で結果が大きく変わることは事実である。

まとめ 

以上の通り、保団連の調査結果は、日本の新薬が高いように見せかけるために、恣意的に、日本の薬価が高くなるような調査方法を用いていることがうかがわれる。

調査の動機等 

全国保険医団体連合会 

全国保険医団体連合会は、「保険医の経営、生活ならびに権利を守ること」「保険で良い医療の充実・改善を通じて国民医療を守ること」を目的にした保険医の団体である。 そして、この団体は、何故か、薬価を目の敵にする。 その根本には、日本の皆保険制度における診療報酬が低く抑えられていることにある。

しかし経済協力開発機構(OECD)が2010年6月に発表した「OECD Health Data 2010」によると、日本の医療費(対GDP比)はOECD加盟34カ国中、第20位であり、先進5カ国(G5)の中では最下位である。

日本の医療費、OECDの中で第20位 - 全国保険医団体連合会

全国保険医団体連合会は、「薬価が高いせいで診療報酬本体が低く抑えられている」「薬価を引き下げれば、その分、診療報酬本体が引き上げられる」と考えているようだ。 しかし、OECDの医療費には、薬剤費も含まれている。 医療費のデータを詳しく見れば、全国保険医団体連合会の認識が正しくないことは明らかである。

先進5カ国の医療費(米ドル/人)1995-2015 先進5カ国の医療費(対GDP)1995-2015 OECD主要統計(Health spending)

G7では、一人当たり価格で見ても、対GDP比で見ても、米国の医療費が突出して高く、日本の医療費は2010年までは最低水準である。 2010年以降はやや増えているが、それでも、医療費が突出して高い米国を除いた残りの6カ国の中間くらいである。 これを見れば明らかな通り、日本では、医療費全体が低く抑えられている結果として、診療報酬本体も低く抑えられていることは言うまでもない。 薬剤費に食われた結果として、診療報酬本体が低く抑えられたわけではないのだ。

仮に、百歩譲って「日本の薬価が高い」としても、薬価を引き下げた分が診療報酬本体に回される保証はない。 というより、薬価を引き下げようと圧力を掛けてくる連中は、それにより浮いた分を医療以外に使おうとしているのだから、薬価を引き下げても診療報酬本体が引き上げられる可能性はほとんどない。 全国保険医団体連合会のやっていることは単なる足の引っ張り合いに過ぎない。 ちゃんとした団体なら、足の引っ張り合いよりも、どうすれば日本の医療を良くできるか建設的に議論すべきだろう。

調査員(浜六郎)の正体 

報告書の名前を見ると、二人のうち一人は医療業界では悪評高い浜六郎氏である。 もう一人の人物も、彼が設立した「医薬ビジランス研究所」のメンバーである。 彼は、データを都合よく細工して陰謀論をデッチ上げ、かつ、一般人に誤った健康情報を流布することで有名である。

有名なのは、タミフルの危険性の捏造事件であろう。 統計のマジックは彼の得意技のようだ。 その他、浜六郎氏は、タミフルが異常行動の原因だと断定し、タミフルの承認取消を求めている。 しかし、厚生労働省の発表では、タミフル発売前にもインフルエンザの進行で同様の症状が出ており、専門家の調査結果でも因果関係は否定的だとされている。 つまり、タミフルが効き始めが間に合わずにインフルエンザが進行して異常行動につながった可能性が高いのに、浜六郎氏はタミフルが原因だと決めつけているのである。 そもそも、この異常行動もごく稀な事例であり、かつ、事前に分かっていればコントロール可能なものであるので、注意喚起を行えば済むことであり、承認取消まで求める必要はどこにもない。

彼は、コレステロール値とがんの関係についても、医学的にデタラメなことを言っている。 末期のがん患者は、栄養をがん細胞に持っていかれるため、コレステロール値は低くなりがちである。 その結果、単純に、コレステロール値が高い人と低い人に分類すると、コレステロール値が低い人の方にがん患者が多くなる。 浜六郎氏は、このデータを根拠にして「コレステロール値を下げるとがんになる」と言い出す。 彼は、統計のマジックを使って、原因と結果を見事に逆転させているのである。

最近では、イレッサ薬害を捏造し、原告を焚きつけたことで有名である。 彼は、イレッサは有害なだけで有効性のないインチキ薬だとし、承認当時に知り得た危険性を添付文書から故意に外し、承認後の厚生労働省の対応が遅れたために被害が拡大したと主張した。 しかし、東京高裁判決大阪高裁判決とも、イレッサに有害性を上回る有効性が認められること、承認当時に知り得た危険性を添付文書に十分に記載したことを認定している。 また、緊急安全性情報が出されるまでの経緯を検証すると、厚生労働省が素早い対応を行って、副作用死被害を減少させたことが読み取れる。 彼は、また、統計のマジック等を使って、陰謀論を捏造したのである。

今回も、同様に、統計のマジックを使って、「日本の薬価は高い」という現実に反した結果を作り出しているのである。 そのカラクリは後でじっくり説明する。

ともかく、全国保険医団体連合会は、こうしたインチキな人物を調査に加えることのないよう、自らのコンプライアンスをしっかりと検証すべきだろう。

他のデータ・事情等との整合性 

ドラックラグ・未承認薬問題との整合性 

もし、仮に、保団連の調査結果のとおり「日本の薬価が高い」と仮定すると、次のようなドラッグラグ・未承認薬問題の発生原因の説明がつかない。

医薬用世界売上上位品目の主要5カ国の上市順位(2013)

医薬品産業強化総合戦略 ~グローバル展開を見据えた創薬~(参考資料)平成27年9月4日厚生労働省P.8

日本の医療費や薬剤費との整合性 

また、仮に、保団連の調査結果のとおり「日本の薬価が高い」と仮定すると、日本の医療費や薬剤費が他国に比べて突出して高くなるはずである。 日本は国民皆保険制度で自由に保険診療の医薬品が使え、「薬漬け」という批判も生じるくらいである。 これで、薬価が高いならば、薬剤費は相当高くなり、医療費も大きく押し上げるはずである。 しかし、経済協力開発機構(OECD)のデータではそうなっていない。

先進5カ国の薬剤費(米ドル/人)1995-2015 先進5カ国の薬剤費(対GDP)1995-2015 OECD主要統計(Pharmaceutical spending)

G7では、一人当たり価格で見ても、対GDP比で見ても、米国の薬剤費が突出して高く、日本の薬剤費は2008年までは最低水準である。 2008年以降、他国の薬剤費の伸び率が小さくなり、相対的に日本の薬剤費が高くなっているが、それでも、一人当たり価格では米国よりもかなり低い。 GDP比では、米国並みの高い水準に達しているが、これは、米国の経済が好調で、かつ、日本の経済が停滞している影響がある。 保団連の調査は2010年のものであるが、もしも、「英国、フランスと比較して約2倍、ドイツと比較して約1.5倍」が正しいなら、日本はフランスと比較して薬剤の使用量が約半分、ドイツと比較しても7割以下となるはずである。 2010年の英国の薬剤費のデータが不明であるが、直線補完で2010年の薬剤費を推定すると、英国と比較して日本の薬剤使用量はやや少ないことになる。 つまり、保団連の調査結果が正しいと仮定すれば、日本は「薬漬け」どころか、薬の使用を突出して控えていることになってしまう。

日本の新薬の価格が下がる事情 

日本には、欧米諸国にはない、特許期間中の新薬の価格を継続的に引き下げる制度がある。

上市後の価格推移 このような新薬の薬価算定方法の違いに加えて、新薬上市直後から価格が定期的に下落することも、日本の価格水準が低いことの一因となっている。 日本では新薬上市後は市場実勢価格に応じて原則2年ごとに薬価の改定が行われる。 新薬上市直後から、こうした定期的な価格の引下げが行われるのは主要先進国のなかでは日本だけである。 図表3-3-32は、日本、米国、イギリスにおける医薬品の物価指数の推移をみたものであるが、米国、イギリスでは、物価変動とほぼ連動するかたちで医薬品価格が推移しているのに対し、日本では薬価改定のたびごとに医薬品の価格は下落しており、総平均の物価との乖離が次第に大 きくなっている。

製薬産業の将来像〜2015年に向けた産業の使命と課題〜P.147

この制度の元では、新薬の価格を欧米より高く維持するのは困難で、「日本の薬価は高い」という現実は生じ得ない。


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