コンパッショネート・ユース制度
日経新聞の報道より
オンライン版日経新聞では会員以外にはほとんどの記事内容が読めないので、個人ブログから引用する。
厚生労働省は重い病気にかかっている患者に対し、国内で未承認の医薬品を使いやすくする制度を創設する。 がんなどが進行し、新薬の審査・承認を待てない患者に投薬治療の機会を提供する狙い。 治療を受ける患者の経済的な負担を和らげるため、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」を新制度に一部適用することも検討する。 来年の通常国会に薬事法改正案を提出し、早ければ2014年度に導入したい考えだ。
厚労省が創設するのは、重度の病気でほかに治療法のない患者に対して未承認薬を提供する「コンパッショネート・ユース制度(CU制度)」と呼ばれる仕組み。 欧米で導入されており、日本版として詳細を詰める。
欧米など日本と同じ水準の規制がある国で承認済みで、日本の製薬会社が国内での開発・製造を検討している医薬品を想定。 重度の病気で、新薬の安全性などを製薬会社などが最終確認する治験に参加できないような患者を対象とする方向だ。
薬は製薬会社がまとめて輸入し、患者は一定の条件を満たした医療機関で治療を受ける。
ドラッグラグ・未承認薬問題を悪化させないためには、「日本の製薬会社が国内での開発・製造を検討している医薬品」に限定するだけでは不十分で、制度の利用に治験実施を義務づけることが必要である。 そうした厳しい条件を課したうえで、治験に参加できない患者に限定して認めるならば、それは、患者団体が求める原則禁止論(一時的かつ限定的解禁論)そのものとなる。
治験を実施して国が承認を行うという原則は堅持しつつ、症例数が極端に少ないなどの理由により日本では開発が進まない国内未承認薬については、CU制度を活用し、その間、製薬企業が海外データを活用するなどして、最終的に承認に結びつけるような制度設計ができないか。
考慮すべき事項
- 国内で必要な治験を行った上で、国が承認するとの原則に影響を及ぼさないこと
- 一定の品質等が確保できる範囲であること
など
「最終的に承認に結びつけるような制度設計」であるならば、正しく、患者団体が求める理想の混合診療であろう。 それなのに、日経新聞は、相変わらず、患者を出汁にした金儲けを推奨したいようだ。
厚生労働省は、重い病気に日本国内で承認を受けていない医薬品を使えるようにする新制度について、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」の適用を検討する方針だ。 ただ、ほかに治療法がない重度の患者に限定する方向。 混合診療の適用拡大の一歩にはなるが、より患者の要望に沿った大胆な制度改革が急務だ。
日本では混合診療は原則禁止されている。 国内で承認されていない新薬を使う医療などを受ける場合は、本来は保険の適用になる検査や治療にかかる費用も含めて全額自己負担する必要がある。
仮に混合診療が解禁されれば、患者は保険診療部分で費用負担が軽くなる利点がある。 ただ、混合診療の解禁には「製薬会社などが保険適用を目指さなくなり、医療格差が広がる」といった医療界の反対論が根強い。 現在は一部の先進医療にだけ例外的措置として認められているが、施設も治療法も限定され、100程度の医療行為にしか承認されていない。
新制度は、命にかかわる重度の病気の患者に人道的見地から未承認薬の使用を認める仕組みになる見通しだ。 このため、仮に混合診療を認めたとしても、本格的な拡大にはつながらない公算が大きい。 あくまで薬剤の承認の遅れ(ドラッグラグ)への対応策との位置付けだ。
がんなど重い病気の医薬品は高価なものが多い。 欧米では類似の制度で未承認薬を使う場合に、薬代を保険サービスでまかなう例もある。 患者負担の軽減という視点からも制度改革の議論も尽くす必要がある。
既に述べた通り、新制度は「患者の要望に沿った」過不足のない制度となる。 「大胆な制度改革が急務」は「患者の要望に沿った」ものではなく、混合診療への参入を希望する企業の要望に沿ったものでしかない。 患者団体の要望を超える「本格的な拡大」を行なえば、「薬剤の承認の遅れ(ドラッグラグ)」は悪化し、確実に「患者負担の軽減」に逆行する。
「日本経済新聞」と経済の新聞を名乗るくらいだから、企業の利益を第一に記事を書くのは構わない。 しかし、患者を口実にした大嘘を記事にするのはいい加減に止めてもらいたい。
補足
コンパッショネート・ユース制度はドラッグラグ・未承認薬問題の本質的な解決策ではない。 ちゃんと制度を設計すれば、ドラッグラグ・未承認薬問題を悪化させる要因にはならないが、改善する要因にも決してならない。 多大な経済的負担を背負える人にとっては、その経済的負担と引き換えに治療の道を切り開いてくれる制度とはなるだろう。 しかし、多大な経済的負担を背負えない人にとっては何のメリットもない。 また、かろうじて経済的負担を背負える人にとっても、決して、楽な負担ではない。 本制度を導入したからと言って、ドラッグラグ・未承認薬問題の改善策が必要なくなるわけではない。 本制度の対象となる治療法は全て保険で使えるようにすることこそが本当に必要な解決策なのである。 そのことを忘れてはならない。
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