混合診療裁判

健康保険受給権確認請求 

  • 東京地裁では、国の政策の是非には踏み込まなかった(原告の実質敗訴)
  • 東京高裁では、国の政策は合法・合憲とした(原告の全面敗訴)

東京地裁(平成19年11月7日判決) 

本件裁判を読み解くには、次の二つを明確に区別する必要がある。

  • 混合診療に該当する医療行為
  • 混合診療における保険給付

本件裁判では、前者については明示的に判断回避している。 本件裁判の判断が及んでいるのは、後者に関する見解のみである。

まず、混合診療の言葉の定義が述べられているので、第2「事案の概要」1「争いのない事実等」(3)を引用しておく。

一般に,法63条1項に定める「療養の給付」に該当する診療(保険診療)と,該当しない診療(自由診療)を併用することを混合診療というところ, 厚生労働省は,混合診療が行われた場合には,自由診療はもとより,本来「療養の給付」に該当する保険診療相当分についても,法に基づく給付を受けられなくなる旨解釈している。
平成18年(行ウ)第124号健康保険受給権確認請求事件{http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071112151712.pdf)

ここで言う「療養の給付」に該当する診療とは、保険給付を受ける場合に限定したものではなく、純粋に医学的に同等の診療を受けること指している。 つまり、この裁判では、保険給付の有無にかかわらず、保険診療相当の診療と自由診療相当の診療が併用されることを「混合診療」と定義している。 一般に混合診療と言った場合は、自由診療を含む診療に保険給付を行うことを指す場合もあるが、それは、この裁判での定義とは違う。 また、国が禁止している混合診療は、この裁判の定義と一致している。

裁判所が認定した法令を示すため、2「法令の定め」(2)【丸1】を引用する。

法72条1項は,保険医療機関において診察に従事する保険医(法64条により,保険医療機関において健康保険の診療に従事する厚生労働大臣の登録を受けた医師又は歯科医師をいう。)等は,「厚生労働省令で定めるところにより,健康保険の診療又は調剤に当たらなければならない。」と定め, この委任を受けた「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(昭和32年厚生省令第15号。以下「療担規則」という。)18条は,「保険医は,特殊な療法又は新しい療法等については,厚生労働大臣の定めるもののほか行ってはならない。」と定めている。
平成18年(行ウ)第124号健康保険受給権確認請求事件{http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071112151712.pdf)

また、同【丸3】も引用する。

保険医が「療養の給付」として用いることができる医薬品の品目及びその価格については,前記法72条1項の委任を受けた療担規則19条1項が「保険医は,厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物を患者に施用し,又は処方してはならない」と定め, さらにこれを受けた「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等(平成18年厚生労働省告」示第501号。乙11)第六によって,一部品目を除き, 「使用薬剤の薬価(薬価基準)」(平成18年厚生労働省告示第95号。以下「薬価基準」という。)の別表に収載されている医薬品である旨が明らかにされている。
平成18年(行ウ)第124号健康保険受給権確認請求事件{http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071112151712.pdf)

以上により、保険医は、自由診療も混合診療も原則禁止されている。

裁判で争われた内容を示すため、3「本件の争点」は全文引用する。

インターフェロン療法が,個別的にみれば法63条1項の「療養の給付」に該当し,保険診療の対象となり,活性化自己リンパ球移入療法が個別的にみれば同条項の「療養の給付」に該当せず,保険診療の対象とならないことは,当事者間に争いがない。 そうすると,患者が,インターフェロン療法と活性化自己リンパ球移入療法を受けた場合には,インターフェロン療法は保険診療として保険給付を受け,活性化自己リンパ球移入療法は保険診療の対象外である自由診療として患者が自己負担をすべきことになると考えるのが自然な帰結といえよう。 しかしながら,この点について,被告は,インターフェロン療法を活性化自己リンパ球移入療法と併用して行う場合には,インターフェロン療法もまた,法63条1項の「療養の給付」に該当しないと解すべきであると主張する。
その理由として,被告は,(1)複数の医療行為が行われる場合には,それらの複数の医療行為を合わせて不可分一体の1つの医療行為であるとして法63条1項の「療養の給付」が予定したものに該当するかどうかを検討すべきであり, 個別的には保険診療に該当するものであっても,これに保険診療に該当しないものが加わって一体として「療養の給付」に該当しないことになれば,前者についても保険給付は受けられないと解すべきである, (2)保険外併用療養費制度について定めた法86条は,保険診療と自由診療が混在する混合診療のうち,健康保険により給付すべきものを限定的に掲げたものであるから, 反対解釈により,混合診療のうちこの保険外併用療養費制度に該当しないものについては,すべて法63条1項の「療養の給付」に当たらないと解されるべきであると主張する。
そこで,本件の争点は,上記(1)及び(2)の被告の主張の当否,加えて,(3)原告が主張する憲法14条違反の主張の当否である。
平成18年(行ウ)第124号健康保険受給権確認請求事件{http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071112151712.pdf)

4「争点に関する当事者の主張」にまとめられた争点を以下に挙げる。

争点1
複数の医療行為が行われる場合には,それらを不可分一体の1つの医療行為とみて,法63条1項の「療養の給付」に該当するか否かを判断すべきであると解すべきかどうか。
争点2
保険外併用療養費制度について定めた法86条の解釈によって,同制度に該当するもの以外の混合診療については,本来保険診療に該当するものも含めて,すべて法63条1項の「療養の給付」に当たらないと解釈することができるか。
争点3
同じく保険料を支払っているにもかかわらず,混合診療になると,保険診療に該当する部分についても保険給付を受けられなくなることは,憲法14条等に反するといえるか。

争点2について、被告(国)側は、混合診療の保険給付を認めていないという主張を展開しているのに対して、原告(患者)側は次のように、混合診療禁止の法的根拠がないとしている。 両者の話は全くかみ合っていない

そもそも,混合診療を明示的に禁止した法の規定はないから,混合診療を一般的に禁止する法の立法者意思なるものは存在しないし,被告が主張する立法者意思や立法事実は何ら証明されていない。 被告は,旧法における特定療養費制度(旧法86条)は,混合診療を一般的には是認しない趣旨と解すべきである旨主張するが,特定療養費制度の規定は,むしろ保険診療と自由診療の併用が可能であることを確認的に規定しているのみであって,それ以外の混合診療を禁止している趣旨は含まれていないと解される。 そして,現行法の保険外併用療養費制度(法86条)は,本質的に特定療養費制度と同じであって,基本的枠組みは残したままであるから,混合診療を一般的に禁止する法的根拠にはなり得ない。
平成18年(行ウ)第124号健康保険受給権確認請求事件{http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071112151712.pdf)

これ以外には、双方の主張の中に混合診療禁止の是非を論じた部分は見当たらない。 裁判所の判断として、唯一、混合診療禁止の是非について記述されてる部分として、第3「当裁判所の判断」2「争点2」(4)を引用する。

なお,被告は,昭和59年及び平成18年の法改正によって,混合診療を一般的には認めないという法の立法者意思が明確にされたにもかかわらず,なお法の解釈として混合診療が許容されている旨解するのであれば,この解釈は上記立法者意思に反する旨主張する。 また,被告は,混合診療の原則的禁止という厚生労働省が採用する解釈,政策は,医療の平等を保障する必要性があること,混合診療を解禁すれば, 患者の負担が不当に増大するおそれがあること,医療の安全性及び有効性を確保する必要があることに照らしても,合理的である旨主張する。
しかしながら,そもそも,一般的にいえば,保険診療と自由診療が併用された混合診療については, 一方で,併用される自由診療の内,何をどのような方式で保険給付の対象とすべきか,また,それに伴う弊害にどのように対処すべきかという問題があり, 他方で,自由診療が併用された場合にもともとの保険診療相当部分についてどのような取扱いがされるかという問題があるところ, これらは別個の問題であって,両者が不即不離,論理必然の関係にあると解することはできない。 そして,本件の問題の核心は,まさに後者の問題,すなわち,原告が,個別的にみれば,法及びその委任を受けた告示等によって,法63条1項の「療養の給付」を受けることができる権利を有すると解されるにもかかわらず, 他の自由診療行為が併用されることにより,いかなる法律上の根拠によって,当該「療養の給付」を受ける権利を有しないことになると解釈することができるのかという点であるところ, 法律上,上記のような解釈を採ることができないことは,縷々述べてきたとおりである。 また,このような法解釈の問題と,差額徴収制度による弊害への対応や混合診療全体の在り方等の問題とは,次元の異なる問題であることは言うまでもない。
平成18年(行ウ)第124号健康保険受給権確認請求事件{http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071112151712.pdf)

「しかしながら」以降の記述が少々ややこしいので噛み砕いて読み解こう。まず、混合診療問題について、大きく二つに論点を分けている。

  • 併用される自由診療の内,何をどのような方式で保険給付の対象とすべきか,また,それに伴う弊害にどのように対処すべきか
  • 自由診療が併用された場合にもともとの保険診療相当部分についてどのような取扱いがされるか

これらが「別個の問題」であって、「不即不離,論理必然の関係にあると解することはできない」としている。 そして、「本件の問題の核心は,まさに後者の問題」として、患者には給付を受ける権利が明記されていること、給付を拒否される法的根拠がないことが述べられている。 最後に、補足として、改めて次の二つが「次元の異なる問題」と指摘されている。

  • このような法解釈の問題
  • 差額徴収制度による弊害への対応や混合診療全体の在り方

「このような法解釈」が指し示すことは、直前の文で述べられていること、すなわち、給付の権利の有無に関する法解釈であり、これは、「自由診療が併用された場合にもともとの保険診療相当部分についてどのような取扱いがされるか」と同等のことを言っている。 また、意味から見て、「混合診療全体の在り方等の問題」とは「併用される自由診療の内,何をどのような方式で保険給付の対象とすべきか」と対応し、「差額徴収制度による弊害への対応」は「それに伴う弊害にどのように対処すべきか」と対応しているのは明らかだろう。

以上、まとめると、判決文は、次の両者を「次元の異なる問題」として、「混合診療を一般的には認めないという法の立法者意思」という前者の問題は前者には及ばないとしている。

このような法解釈の問題
自由診療が併用された場合にもともとの保険診療相当部分についてどのような取扱いがされるか
差額徴収制度による弊害への対応や混合診療全体の在り方等
併用される自由診療の内,何をどのような方式で保険給付の対象とすべきか,また,それに伴う弊害にどのように対処すべきか

まとめると、この判決が言ってることは、混合診療であっても保険給付は拒否できないということであって、混合診療禁止の是非は全く論じていない。 というより、混合診療禁止の是非について論じないことを明言している。

厚生労働省は、これまで、よほど酷いインチキ療法でもなければ、混合診療を実質的に黙認してきた。 その代わり、混合診療には保険給付しないという対応で、一定の歯止めをかけてきたのである。 この判決が確定すれば、厚生労働省は従来の対応を大きく変える必要が生じるだろう。 具体的には、従来のように混合診療を黙認することはできなくなる。 黙認すれば、保険給付を拒否できないのだから、なし崩し的に混合診療が拡大してしまう。 それを防ぐには、保険医療機関の指定取消、または、保険医の登録取消を視野に入れた対応が必要となる。つまり、混合診療は完全に不可能になるのである。

原告(患者)が本当に求めていることは、混合診療の保険給付ではなく、「県立がんセンター」でLAK療法を受けることである。 しかし、裁判所は、「県立がんセンター」でLAK療法を禁止することについての判断に踏み込まなかった。 結果として、この判決を受けても、原告(患者)は「県立がんセンター」でLAK療法を受けることはできない。 つまり、実質、原告(患者)の敗訴である。

事件の概要(原告談)によれば、実は、この事件の本質は混合診療問題ではない。 とっくの昔に見切りをつけられた効果が乏しく、かつ、高額な療法が「県立がんセンター」で行われていることが適切な医療行為であるのかどうかの問題である。 本件では、二重口座による隠蔽工作が行なわれており、違法性の認識があるのは間違いない。 そして、混合診療かどうかを別としても、公的機関として会計上も不透明な処理であって適切ではない。

本件裁判は、「県立がんセンター」で行われた療法が適切な医療行為であるのかどうかに関わらず、患者には保険給付を受ける権利があると認めた物である。 決して、「県立がんセンター」で行われた療法にお墨付きを与えたわけではない

東京高裁判決(平成21年09月29日判決) 

主文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,1,2審とも被控訴人の負担とする。
平成19(行コ)405 健康保険受給権確認請求控訴事件(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100405102504.pdf)

判決文を要約すると次のとおり。

  • 法令で混合診療が禁止されているのは明らか
  • 混合診療は禁止されているのだから、給付の有無が明記されてなくても、「療養の給付」が給付されることにはならない
  • 特定療養費や保険外併用療養費に「療養の給付」が給付されないことから、混合診療にも「療養の給付」が給付されないと類推可能
  • 混合診療にも「療養の給付」が給付されると仮定すると、特定療養費制度創設の必要性が成り立たない
  • 憲法は合理的理由に基づいた区別を禁止しておらず、混合診療を禁止することには一定の合理性があるから、法律の裁量権の範囲内であり、受給できなくても憲法違反にはならない
  • 有効性が明らかでないとして特定療養費から外された療法を受けられなくなっても、生存権は脅かされないから憲法違反にはならない
  • LAK療法に代わる他の活性化リンパ球移入療法を受ける余地があるので、憲法違反にはならない

判決文を読むと、非常に妥当な判決であり、最高裁でも覆る余地が全くないように見える。

混合診療は禁止されてるか? 

この点については、東京地裁では「別個の問題」「次元の異なる問題」として、判断が避けられた。 東京高裁では、混合診療は法令で禁止されているという解釈を示した。

5争点についての当事者の主張
~(中略)~
(2)争点2(保険外併用療養費制度について定めた法の解釈によって,同制度に該当するもの以外の混合診療については,本来保険診療に相当するものも含めて,すべて「療養の給付」に当たらず,保険給付を受けられないと解すべきか。)について
~(中略)~
(被控訴人の主張)
ア特定療養費制度の創設の最大の動機は,医療機関が乱発する差額徴収による患者負担の不当な増大に対し,差額徴収(混合診療)を法制度に取り入れることで原則を持たせ,規定によって固定化することであり, その一環として一定の先進医療も特定療養費に組み入れたが,その他の先進医療を積極的に一律禁止することは行われなかったものであり,特定の療養以外の自由診療については保険に収載される可能性はないが, その併用を禁止するとも黙認するとも明文の規定をせず,いわば旧法は関知しないという態度をとっているものであり, 特定療養費制度の規定は,保険診療と自由診療の併用が可能であることを確認的に規定しているのみであって,それ以外の混合診療を禁止している趣旨は含まれていないと解される。 特定療養費制度創設時の所管大臣の説明,答弁にも,混合診療禁止が原則であるという趣旨のものはどこにもない。
平成19(行コ)405 健康保険受給権確認請求控訴事件(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100405102504.pdf)

被控訴人は、「混合診療禁止が原則であるという趣旨のものはどこにもない」としている。

第3当裁判所の判断
1争点2(保険外併用療養費制度について定めた法の解釈によって,同制度に該当するもの以外の混合診療については,本来保険診療に相当するものも含めて,すべて「療養の給付」に当たらず,保険給付を受けられないと解すべきか。)について
~(中略)~
(2)そこで,前記法令の定めを含む以上の認定事実に基づいて,まず,保険外併用療養費制度が引き継いだ特定療養費制度について検討する。 ウ~(中略)~特定療養費制度創設に伴い,療担規則が改正され,同規則18条により,保険医は,特定承認保険医療機関において高度先進医療を行う場合を除いて(同条ただし書),特殊な療法等,すなわち高度先進医療等を行ってはならないとされていたのであり, 旧法下では,保険医は,保険医療機関において,高度先進医療を含む混合診療を行うことは認められていなかったものと解される。 仮に,保険医療機関において,高度先進医療を含む混合診療を行った場合には,上記療担規則に違反するものであり,同診療の基礎的診療部分について,「療養の給付」に該当するものとして保険給付を行うことは,特定療養費制度を創設した上記趣旨に反するものであり,許されないものと解すべきである。
エ~(中略)~したものであり,特定療養費制度創設後の旧法においては,保険診療と自由診療との混在する混合診療は,特定療養費の支給の対象となる療養(診療)に限られると解せられ, 旧法は,特定療養費制度として,混合診療において保険給付をする場合を明確に規定することにより,これに当たらない場合には,保険給付をしないこととして(ただし,法は,上記のとおり保険給付をしない場合を明記するものではない。),混合診療を原則として禁止したものと解するのが相当である。
(3)次に,現行の保険外併用療養費制度について検討する。
ア保険外併用療養費制度は,特定療養費制度を引き継いだものであり,~(中略)~
特定療養費制度から保険外併用療養費制度への改正に当たっては,混合診療を全面解禁すべきである(患者が選択する混合診療において通常の保険内診療分の保険による費用負担を認める。)との意見もあったが, 本件合意においては,混合診療の全面解禁は行わず(上記意見を採用しない。),いわば混合診療について要件を限定して一部解禁していた特定療養費制度の根幹は維持することとして,先進医療を受けられる医療機関について要件を緩和してその範囲を拡大し,かつ,保険給付の対象となる混合診療としての先進医療の範囲も拡大し, もって,混合診療を許容する範囲を拡大し,また,先進医療の認定や,その保険導入手続を迅速化するなどの措置を講じたものであり, このようなことから,厚生労働大臣は,平成18年改正案について,混合診療の実質的解禁と言えると趣旨説明したものと認められる。
平成19(行コ)405 健康保険受給権確認請求控訴事件(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100405102504.pdf)

東京高裁は、療担規則同規則18条により、「保険医は,特定承認保険医療機関において高度先進医療を行う場合を除いて(同条ただし書),特殊な療法等,すなわち高度先進医療等を行ってはならない」とされていたことから、混合診療は禁止されているという解釈を示した。

混合診療は保険給付対象外か? 

東京地裁では、混合診療時に保険給付しないとは法令に書いてないから混合診療でも保険の受給権があると認めた。 それに対して、東京高裁は、違法行為なのだから法令で保険給付について触れてないのは当たり前で、法令に書いてないから受給権があるとする論理は成り立たないとした。 そして、どのような類推を行なっても、混合診療時に保険給付しないとしか解釈しようがないから、受給権はないとした。

5争点についての当事者の主張
~(中略)~
(2)争点2(保険外併用療養費制度について定めた法の解釈によって,同制度に該当するもの以外の混合診療については,本来保険診療に相当するものも含めて,すべて「療養の給付」に当たらず,保険給付を受けられないと解すべきか。)について
~(中略)~
(被控訴人の主張)
~(中略)~
イ旧法86条1項は,特定承認保険医療機関による療養(高度先進医療)及び選定療養「を受けたときは,『その療養に要した費用』について,特定療養費を支給する。」と定めており, 「その療養」とは,直前の文言を指すものであることは疑いようのないところであるから,「その療養に要した費用」とは文言上当然に「高度先進医療及び選定療養に要した費用」を指すものと考えるほかはない。
また,仮に,上記のように解されないとしても,昭和59年改正により特定療養費制度を創設し,新たに保険給付の対象としたのは,高度先進医療行為に付随し,高度先進医療行為の一部をなす基礎的診療行為の部分(診察,画像診断,検査等)であり(予備的主張), その制定の前後を問わず,通常の保険診療について保険が適用され,「療養の給付」がされることに変わりない。
ウ以上のことは,特定療養費制度を引き継いだ保険外併用療養費制度においても同様であり,法86条1項は,「評価療養又は選定療養を受けたときは,その療養に要した費用について,保険外併用療養費を支給する。」と規定しており, この規定から導かれることは,評価療養又は選定療養を受けた際に支払われる保険外併用療養費の支給対象となる療養は「評価療養又は選定療養」そのものであり, 評価療養についていえば,①告示により定められた先進医療等の評価療養がされた場合には当該先進医療に対して費用が支払われるという制度であり, ②評価療養に併用して行われるインターフェロン療法等の本来「療養の給付」に該当する診療に関しては同制度が言及していない以上,評価療養が行われた際にも依然として「療養の給付」の対象であるということである。 そして,評価療養が行われた場合の保険外併用療養費の支給対象が評価療養たる先進医療そのものである以上,その額の計算方法たる「診療報酬の算定方法」は,評価療養たる先進医療が保険外併用療養費の支給対象であることを前提として規定されるべきであり, 下位規範(診療報酬の算定方法)に評価療養(先進医療)に関する定めがないことが不当であり,その内容を改めるべきであり,同定めがないことをもって文理に反するような法解釈を行うことは全くの本末転倒である。
エ仮に,評価療養である先進医療の報酬算定方法を定めていない現行の「算定方法」を前提としても,保険外併用療養費制度は,以下に述べるとおり,混合診療禁止の根拠たり得ない(予備的主張)。
法86条1項が保険外併用療養費を支給すると規定している「その療養」に,先進医療とは別個のインターフェロン療法等の本来「療養の給付」に該当する保険診療を含める解釈はあり得ないところ, 先進医療にもその実施に必要不可欠な診察,検査といった基礎的診療部分は存在することからすれば,当該基礎的診療部分に対して診療報酬の算定方法(診療報酬点数表)を適用し,自己負担部分を控除した額を保険外併用療養費として支給するという解釈の余地はあり, ここで,保険外併用療養費の支給対象となる「療養の給付」類似部分というのは,インターフェロン療法のように,先進医療を行わなくとも必要となる本来的な「療養の給付」は含まず,当該先進医療に付随し,これに必要不可欠な基礎的診療部分に限られる。 したがって,現行の「算定方法」を前提とした上記解釈によっても,インターフェロン療法のように本来的「療養の給付」は保険外併用療養費制度の枠外であり,「療養の給付」として保険給付の対象であることは,前記ウ(主位的主張)と同様である。
特定療養費制度創設時の厚生省保険局長の国会答弁すなわち法(旧法)の趣旨は,特定療養費は認められた保険外診療の基礎的診療部分に支給されるのであって,保険診療全体に支給されるのではない。 そして,特定療養と認められた先進医療の基礎的診療部分は併用する保険診療の同様な基礎的診療部分と重なるから結果的に保険診療に特定療養費が支給されると解釈することができても, 支給はあくまで保険外診療の基礎的診療部分に対してのみで,インターフェロン療法という固有技術部分には支給されないということである。
平成19(行コ)405 健康保険受給権確認請求控訴事件(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100405102504.pdf)

被控訴人は次の様に主張している。

  • 特定療養費=高度先進医療及び選定療養に要した費用(の一部)
  • 保険外併用療養費=評価療養又は選定療養に要した費用(の一部)

旧制度の特定療養費制度でも、新制度の保険外併用療養費でも、「療養の給付」部分を保険給付しているのだから、これらの制度は、「療養の給付」に該当しない診療を併用しても「療養の給付」部分を保険給付しない根拠にならない。 よって、「療養の給付」部分を保険給付しない法的な根拠はないから、高度先進医療(評価療養)や選定療養以外の自由診療を併用しても、「療養の給付」部分は保険給付されるはずだ。

第3当裁判所の判断
1争点2(保険外併用療養費制度について定めた法の解釈によって,同制度に該当するもの以外の混合診療については,本来保険診療に相当するものも含めて,すべて「療養の給付」に当たらず,保険給付を受けられないと解すべきか。)について
~(中略)~
(2)そこで,前記法令の定めを含む以上の認定事実に基づいて,まず,保険外併用療養費制度が引き継いだ特定療養費制度について検討する。
ア~(中略)~に照らすと,特定療養費は,高度先進医療を含む療養が特定承認保険医療機関において行われた場合に,当該診療(混合診療)のうち保険診療(療養の給付)に相当する基礎的診療部分について支給されるものであることが明らかである。
イ~(中略)~被控訴人主張のように,上記部分は保険診療として「療養の給付」の対象となり,特定療養費の支給対象にされないとの解釈をとることが特定療養費制度の趣旨に沿わないことは明らかである。 そもそも,特定療養費制度は,高度先進医療が一般に普及し,保険に導入されるまでの間,同制度の対象とすることとしたものであって,高度先進医療自体に要した費用について保険給付をする制度でないことは明らかであり, 昭和59年改正時の国会の質疑において,厚生省保険局長が,同制度の趣旨について,保険診療で見られる部分は保険診療で見て,特定療養費を支給し,保険診療に取り入れられていない部分(高度先進医療)だけは自己負担にすると説明しているとおりである。 したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
また,被控訴人は,特定療養費制度を創設して保険給付の対象としたのは,高度先進医療行為の一部をなす基礎的診療部分(診察,画像診断,検査等)であると主張(予備的主張)するが, 診察,画像診断,検査等といった基礎的診療部分は高度先進医療固有の部分といえないことが明らかであるのみならず(被控訴人も,特定療養と認められた先進医療の基礎的診療部分は併用する保険診療の同様な基礎的診療部分と重なることを認めている。), また,この点を別としても,特定療養費制度の下では,高度先進医療自体に当たらず,これと併用して行われる通常の診療が,「療養の給付」に当たらないことは上記説示のとおりであるから,上記のような被控訴人の解釈もとることができないことが明らかである。 この点について,被控訴人は,特定療養費制度創設時の厚生省保険局長の国会答弁をその主張の根拠とするが,前記(1)ウ後段に認定の厚生省保険局長の説明は,保険給付の対象となる温熱療法を除く診察,レントゲン診断,検査,処置,手術,投薬等について, いずれも温熱療法固有のものとする趣旨でなく,通常の「療養の給付」に該当する診療を指していることが明らかであって,被控訴人の上記主張の根拠となるものでないことが明らかである。 したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ~(中略)~これを実施するにふさわしい医療機関として承認された特定承認保険医療機関において受けた場合に,その保険診療(療養の給付)に相当する基礎的診療部分について特定療養費を支給(保険給付)することとした趣旨に照らすと, 旧法は,これに該当しない場合,すなわち,高度先進医療を含む混合診療を特定承認保険医療機関以外の医療機関において受けた場合には,保険給付(特定療養費の支給,したがって,「療養の給付」に相当するもの)をしないものとしたと解するのが相当である。~(中略)~
エこれに対し,被控訴人は,~(中略)~などと主張する。
しかしながら,~(中略)~したがって,混合診療の場合に保険給付をしない旨の明文の規定がないことから,直ちに混合診療の場合に「療養の給付」としての保険給付が認められているとすることはできない。 そして,特定療養費制度の規定は,上記認定説示のとおりで,保険診療と高度先進医療である自由診療が併用された混合診療において,新たに保険給付(特定療養費の支給)がされる場合の要件を限定して規定したものであり, 保険診療と自由診療の併用が可能であることを確認している規定にすぎないと解することは到底できず,保険給付の要件に該当しない上記混合診療については,保険給付をしない趣旨であると解すべきであることが明らかである。 仮に,保険医療機関において高度先進医療を含む混合診療をした場合に,高度先進医療を除く基礎的診療部分(「療養の給付」に相当する保険診療相当部分)については,「療養の給付」として保険給付がされるというのであれば, 旧法が保険給付の対象となる高度先進医療及びその担当医療機関を限定的に規定して特定療養費制度を創設する理由,必要性は全くないといわざるを得ない。
~(中略)~したものであり,特定療養費制度創設後の旧法においては,保険診療と自由診療との混在する混合診療は,特定療養費の支給の対象となる療養(診療)に限られると解せられ, 旧法は,特定療養費制度として,混合診療において保険給付をする場合を明確に規定することにより, これに当たらない場合には,保険給付をしないこととして(ただし,法は,上記のとおり保険給付をしない場合を明記するものではない。),混合診療を原則として禁止したものと解するのが相当である。
(3)次に,現行の保険外併用療養費制度について検討する。
~(中略)~
ウこれに対し,被控訴人は~(中略)~と主張するが,特定療養費制度を引き継いだ保険外併用療養費制度は,先進医療が一般に普及し,保険に導入されるまでの間,同制度の対象とすることとしたものであって, 先進医療自体に要した費用について保険給付をする制度ではなく,当該先進医療と併用して行われる保険診療(療養の給付)に相当する基礎的診療部分について保険給付(保険外併用療養費の支給)をする制度であることは上記ア及びイにおいて説示したとおりであるから, 保険給付がされる「その療養」とは当該先進医療自体を指すものではなく,当該先進医療を併用した療養(混合診療)を指すものと解すべきである。 仮に,「その療養」が評価療養としての先進医療自体を指すのであれば,評価療養に係る給付について,殊更に「療養の給付」に含まれないと規定(法63条2項)する必要もないのであり, 法がこのように規定したのは,「その療養」が先進医療を併用した療養(混合診療)を指し,本来「療養の給付」に該当する基礎的診療部分を含むため,この部分について「療養の給付」を行わないことを明らかにした趣旨であると解される。
また,~(中略)~法は,これに該当しない場合,すなわち,保険外併用療養費の支給対象とされていない先進医療に係る療養(混合診療)を受けた場合や,同支給対象とされる先進医療に係る療養(混合診療)を これを実施し得るものと定められた保険医療機関以外の医療機関において受けた場合には,保険給付をしないものとしたと解するのが相当であることは,旧法の場合と同様であり, したがって,この場合には,当該医療機関が保険医療機関であるとしても,当該療養について「療養の給付」を受けることはできないと解すべきであるから,被控訴人の上記主張は採用することができない。
また,被控訴人は,法86条1項により保険外併用療養費として支給されるのは,保険外診療である先進医療固有の基礎的診療部分に限られるから,先進医療と併用する通常の診療については「療養の給付」がされると主張(予備的主張)するが, 前記(2)イ後段に説示したとおり,先進医療固有の基礎的診療部分(保険診療相当部分)というものを観念し難いのみならず,保険外併用療養費の支給対象は,本来「療養の給付」に該当する基礎的診療部分に限られるのであるから, 元々「療養の給付」に該当しない先進医療固有の部分がその一部分でも上記支給対象に当たることはないというべきである(被控訴人のいう先進医療固有の部分に「療養の給付」に相当する部分が含まれているとすれば,被控訴人のいう当該先進医療自体が混合診療なのである。)から,被控訴人の上記主張は採用することができない。
(4)以上のとおりで,保険外併用療養費制度を規定した法の解釈によって,同制度に該当するもの以外の混合診療については,本来保険診療に相当する診療についても,すべて「療養の給付」に当たらず,保険給付を受けられないと解すべきである。
そして,以上の説示によれば,本件訴訟の結論を導くにつき,争点1(複数の医療行為が行われる場合には,それらを不可分一体の1つの医療行為とみて,「療養の給付」に該当するか否かを判断すべきであると解すべきか。)についての判断を要しないことは明らかである。
平成19(行コ)405 健康保険受給権確認請求控訴事件(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100405102504.pdf)

裁判所の判断を平たく言うと、次のとおりである。

  • 特定療養費=高度先進医療及び選定療養と併用した保険診療に相当する基礎的診療部分について支給される
  • 保険外併用療養費=評価療養又は選定療養と併用した保険診療に相当する基礎的診療部分について支給される

高度先進医療(評価療養)や選定療養には1円も保険給付しないのだから、これらに要する費用が特定療養費(保険外併用療養費)とする被控訴人の主張は成り立たない。 特定療養費(保険外併用療養費)は「基礎的診療部分」(診察,画像診断,検査等)の対価だと被控訴人は言うが、その「基礎的診療部分」は保険診療に相当する部分だと被控訴人も認めているから高度先進医療(評価療養)や選定療養には含まれない。 ゆえに、被控訴人の主張どおりだと、常に、特定療養費(保険外併用療養費)=0円となるから矛盾する。

特定療養費解釈

また、被控訴人の主張どおりだと、殊更に特定療養費(保険外併用療養費)が「療養の給付」に含まれないと規定する必要がない。 よって、特定療養費(保険外併用療養費)制度が適用される場合は、「療養の給付」が受けられないと解釈できる。 特定療養費(保険外併用療養費)制度でも「療養の給付」が受けられないなら、当然、その制度に該当しない混合診療では「療養の給付」が受けられないと類推解釈できる。 また、混合診療における保険診療相当部分が「療養の給付」として保険給付がされるならば、特定療養費制度を創設する必要性が全くない。 つまり、特定療養費制度は、混合診療における保険診療相当部分が「療養の給付」として保険給付されないことを前提としている。 確かに、混合診療における保険診療相当部分を「療養の給付」として保険給付しないとは一言も書かれてないが、以上のように類推すれば保険給付しないことは誰の目にも明らかだろう。 そもそも、やってはならない禁止行為なのだから、保険給付するかしないかを書くまでもない。 それなのに、混合診療は保険給付しないと明記してないから受給権があるとする主張は暴論である。

憲法判断 

東京地裁では「争点3について判断するまでもなく」として、憲法判断が避けられた。 東京高裁では、憲法に違反しないという判断を下している。

2争点3(保険外併用療養費制度に該当するもの以外の混合診療については,保険診療に相当する部分についても「療養の給付」に当たらず,保険給付を受けられないと解すること,又は,そのように解される法は,憲法に違反するか。)について
上記のように解される法が憲法に違反しないことは,以下に述べるとおりであり,また,争点2において説示したところによれば,法を上記のように解することが憲法に違反する旨の被控訴人の主張は理由がないことが明らかである。
(1)憲法14条違反について
憲法14条1項は法の下の平等を定めているが,同規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは,その区別が合理性を有する限り,何ら同規定に違反するものではない
そこで,これを法が保険外併用療養費制度を設けて保険給付の受給の可否について区別を設けたことについて検討するに,~(中略)~の確保等の観点から,その範囲を限定することは,やむを得ず,かつ,相当なものといわざるを得ないところであり, 先進医療に係る保険外併用療養費制度は,保険により提供する医療の質の確保等という観点から,保険給付の受給の可否について上記のような区別を設けたものと認められるのであり,このことには合理性が認められるというべきである
これに対し,被控訴人は,その希望するLAK療法は治療行為の有効性,安全性が確認されているのに,これが確認されていない先進医療と区別することなく,LAK療法を併用すれば保険診療部分もすべて自由診療になるということは余りに不合理な差別であると主張するが, LAK療法については,特定療養費制度の下において高度先進医療として承認されていた時期があったものの,その後に,高度先進医療専門家会議により有効性が明らかでないとして高度先進医療としての承認が取り消されたのであるから,被控訴人の上記主張は,その前提において理由がなく,憲法14条違反をいう被控訴人の主張は,理由がない
(2)憲法25条違反について
被控訴人は,混合診療禁止の原則は難病患者に対する安全性,有効性が確認できた保険外の自由診療を受ける機会を奪うもので,死を待つことを強要するという余りに残酷な内容を含むものであるから,著しく合理性を欠くと主張するが,LAK療法を前提としての被控訴人の上記主張が理由がないことは前記認定説示のとおりである。 また,保険外併用療養費制度は,難病患者等に対する先進医療について,安全性,有効性等が先進医療専門家会議において検討,確認されたものについて,これと併用する保険診療相当部分について保険給付(保険外併用療養費の支給)をすることにより,当該先進医療を受けるについての患者の費用負担の軽減を図るものであるし, その制度の実施に当たって,先進医療の認定やその保険導入手続を迅速化するなどの措置が講じられているものである。そして,有効性が明らかにされないとして保険給付の対象から除外されたLAK療法に代わって,別の活性化自己リンパ球移入療法が先進医療専門家会議により安全性,有効性等が確認されたものとして評価療養(先進医療)として認められているのであるから,被控訴人の上記主張は理由がない
法は,憲法25条2項の規定に基づき社会保障制度の一環として立法されたものであるところ,保険外併用療養費制度を導入し,混合診療禁止の原則をとって,先進医療等について保険給付の対象となる診療の範囲を限定している(ただし,その例外の範囲は拡大している。)ことは,以上に認定説示したとおりであるが, これは提供する医療の質(安全性,有効性等)の確保等の観点から行われているものであり,社会保障制度の一環として立法された健康保険の保険給付の制度として合理性を欠くとはいえないから,憲法25条違反をいう被控訴人の主張は,理由がない
(3)憲法29条違反について
保険受給権(法により保険給付を受ける権利)は,憲法25条2項の規定に基づき社会保障制度の一環として立法された健康保険制度により創設された権利であって,その内容は,法によって定められた範囲内において認められるものであり,「療養の給付」の範囲も,法の解釈により決定されるものである。 そして,法が保険外併用療養費制度により一定の保険外診療と併用した保険診療相当部分について保険給付(保険外併用療養費の支給)を認め,保険診療と保険外診療を併用した混合診療における保険診療相当部分について「療養の給付」の範囲から除外したことは, 前記認定説示のとおりであるところ,法は,これにより,被保険者が本来有していた保険受給権(療養の給付を受ける権利)を奪うものではなく,法が保険給付する範囲について定めた結果にすぎないから,国民の財産権を侵害したものではなく,憲法29条違反の問題は生じない
(4)憲法84条違反について被控訴人が引用する最高裁平成18年3月1日大法廷判決・民集60巻2号587頁は,憲法84条は国民に対して義務を課し又は権利を制限するには法律の根拠を要するという法原則を租税について厳格化した形で明文化したものというべきであるとした上で, 市町村が行う国民健康保険の保険料について憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであると判示したものであるところ, 被控訴人は,保険受給権を制限するには上記法原則,したがって,憲法84条の趣旨が及ぶと主張するものであるが,法は,保険給付をする範囲,すなわち保険受給権の内容を定めたものであって,保険受給権を剥奪,制限するものでないことは,前記認定説示のとおりであるし, 法の解釈によって,法が混合診療禁止の原則をとっていると認められるものであるから,本件において憲法84条違反を論じる余地はない
平成19(行コ)405 健康保険受給権確認請求控訴事件(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100405102504.pdf)


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