混合診療世論“調査”(実は世論誘導)
世論誘導
国内で保険対象外の抗がん剤など生命に関わる治療に関しては混合診療を認めるべき」との質問には、全体の78.2%が賛成(賛成33.5%、どちらかといえば賛成 44.7%)、18.0%が反対(反対5.6%、どちらかといえば反対12.4%)となった。 また、「国民の選択の範囲を広げるために、幅広い治療に関して混合診療を認めるべき との質問には、66.8%が賛成(賛成24.2%、どちらかといえば賛成42.6%)、29.4%が反対(反対7.7%、どちらかといえば反対21.7%)となった。
批判
日本福祉大学社会福祉学部教授は次のように批判している。
しかし、この説明には、混合診療(保険診療と保険外診療の併用)がすでに部分解禁されていること、具体的には「保険外併用療養費」制度(旧・特定療養費制度)により、「一定のルールの下で」認められているという基本的事実が欠落しています。 この点を説明せず、回答者に、現在、混合診療が(全面・原則)禁止されているかのように誤解させた上で設問するのは、社会調査で禁じ手とされている「誘導的質問」です。 特に、「国内で保険対象外の抗がん剤など、生命に関わる治療に関しては混合診療」はすでに認められているにもかかわらず、それがあたかも禁止されているかのごとく質問して、特定の結論に誘導することは許されません。 谷岡一郎氏が名著『「社会調査」のウソ』(文春新書、2000、47頁)で述べているように、「一定の結果が出るよう誘導された調査は調査とは呼べず、ただの腐臭を放つゴミでしかない」のです。 二木教授の医療時評(60)「混合診療賛成が8割!?誘導的質問の恐ろしさ」文化連情報2008年10月号(No.367)
真相
この調査結果は、混合診療賛成が2割に満たないとする、従来の多くの同種調査(日本医師会総合研究機構「第1回医療に関する国民意識調査」等)の結果と全く逆
二木教授の医療時評(60)「混合診療賛成が8割!?誘導的質問の恐ろしさ」文化連情報2008年10月号(No.367)
とされている。
原則解禁論 | 現行延長論 | 原則禁止論 | |
---|---|---|---|
医療上の必要性が高い混合診療 | 全面解禁 | 評価療養を慎重に拡大 | 期間限定解禁 |
医学的根拠の乏しい混合診療 | 全面解禁 | 禁止 | 禁止 |
危険性の高い混合診療 | 全面解禁 | 禁止 | 禁止 |
アメニティ項目・医療外サービス | 全面解禁 | 選定療養で対応 | 選定療養で対応 |
民間企業参入 | 可能な限り拡大 | 国民皆保険原則でのみ | 国民皆保険原則でのみ |
詐欺対策・安全対策 | 別途規制 | 制度に内包 | 制度に内包 |
患者負担 | × | △ | △ |
医療財政 | × | △〜◎ | ○ |
短期的治療機会(混合可能患者) | ◎ | △ | ○ |
短期的治療機会(混合不能患者) | △ | △ | △ |
長期的治療機会(混合可能患者) | × | △ | ○ |
長期的治療機会(混合不能患者) | × | △ | △ |
支持者 |
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注:医療財政と長期的治療機会はバーターであり一概には言えない。たとえば、原則解禁論であっても長期的治療機会を犠牲にすれば医療財政の改善は可能である。表では、長期的治療機会が同等である場合の医療財政の有利不利、医療財政が同等である場合の長期的治療機会の有利不利を記載した。
恣意的な意見選別
質問によるバイアス(偏り)を極力排除するため、混合診療の概要に加えて、解禁を求める意見と、これまでどおり禁止を求める双方の意見をバランスよく記載するよう特に配慮した(図10)。
本当に双方の意見をバランスよく記載されているのか。 以下に検証する。
現在、混合診療については、下記のような意見があります。
- 混合診療を認めるべき
- 保険の対象外の治療法を受ける際、その治療だけでなく全ての医療費が全額自己負担となると、医療費負担が非常に大きくなってしまう
- 海外では一般的な治療法でも、日本で健康保険の対象となるのには時間がかかることがある。こうした治療法は、保険の対象となる前でも、自費で速やかに受けられるようにすべき
- 保険診療以外にも、患者が受けたい医療を自分で選択する自由を尊重すべき。保険対象外の治療受けただけで、本来保険対象のものまで全額自己負担になるのはおかしい
- 混合診療はこれまで通り禁止すべき
- 混合診療を認めると、保険対象外の医療が広く行われるようになり、効果や安全性の不透明な医療を多額のお金を払って受けてしまうなど、結果的に患者の利益を損なう危険がある
- 裕福な人だけが保険対象外の高額な医療を組み合わせるようになり、貧富の格差が健康の格差を広げてしまう
- 保険外の治療を自費で組み合わせることが一般的になると、「必要な医療は全て健康保険の対象とする」という原則が崩れ、今後新しい治療法が保険の対象と認められにくくなってしまう
これを見る限り、「質問によるバイアス(偏り)」が発生するように、意図的にバランスを欠いた記載をするよう配慮したとしか思えない。
- 禁止派の主張として挙げられた意見は、いずれも、主張の趣旨を正しく伝えるための説明を採用していない。
- 禁止派の主張と解禁派の主張が一対一で対応していない。
- 解禁派の主張のうち、反発されやすい意見が取り除かれている。
- 最も現実的な意見と思われる一時的かつ限定解禁派(=原則禁止派)の意見は全く書かれていない。
事前知識がなく、他から一切の情報を得ていないという前提であれば、この「世論調査」を見た者は誰だって、解禁に賛成するだろう。 しかし、本当の真実を知っていたならどうだろうか。
詐欺や安全制対策
まず、禁止派の主張の1番目であるが、薬事法違反等の実態を知らない人には、ピンと来ない話である。 実態を知らない人に、漠然とした「効果や安全性の不透明な医療」の危険性と言っても、非現実的な妄想に対して過剰反応しているようにしか聞こえない。 現在、薬事法等で、インチキな治療法や危険な治療法は規制されている。 しかし、そうした規制は有名無実となり、インチキな治療法や危険な治療法が沢山野放しになっているのが実情である。 とはいえ、保険医の多くは、そうしたインチキな治療法や危険な治療法には手を出さない。 それは、混合診療を禁止しているおかげに他ならない。 保険医にインチキな治療法や危険な治療法を行なうことを禁止し、違反者は認定禁止処置とすることで、ルールを守らせているのである。 しかし、それでも、保険医の中には、違反する者が少なからずいる。 そうした不心得な保険医を全て見つけ出して処罰するのは難しいのである。 近畿大学の教授(当時)が、同大学の公式Webサイト「腫瘍免疫等研究所」で、新免疫療法なるインチキ療法を宣伝していた。 しかし、彼の元部下が治療成績を捏造していた事実を暴露したことにより、インチキが明るみに出た。 患者に訴えられ、ついには逮捕にまで至っている。 横浜の某病院ではバイブル本の大家が治療と称して怪しげな物を投与しているという。 その人物は、前出の近畿大学の元教授の指導を受けていたとされる。 新潟大学の某教授は、バイブル本で自律神経免疫療法なるインチキ療法を進めている。 バイブル本の内容は専門家が見れば一目で分かるほどに荒唐無稽である。 彼は、極めて悪質なことに、根拠もなくWHO式の疼痛治療まで否定して、患者から疼痛緩和の機会まで奪っている。 「気光治療院」では、あん摩マッサージ指圧師の資格しか持たない者ががん治療と称して多額の金をだまし取っていた。 ひとつひとつ挙げていたらキリが無いほど、市場にはインチキな治療法や危険な治療法が氾濫している。 そうした実態を知らされれば、「効果や安全性の不透明な医療」の危険性が、決して、夢物語ではないことが分かるだろう。 この「世論調査」の書き方では、その辺りが全く表現されていない。
国民皆保険制度の後退
禁止派の主張の3番目であるが、これも、治療法の承認制度の実態を知らない者にはピンと来ない。 知らない人から見れば、混合診療と「今後新しい治療法が保険の対象と認められにくく」なることがどう関係するのか見えて来ない。 多くの国民は、国主導で新たな治療法を探し出して評価を行っていると思っているのではないか。 しかし、そんなやり方は現実的に不可能である。 現実では、国は承認申請を待っているだけである。 新しい治療法を探し出し、その効果を証明するデータを取り、承認申請を行なうのは、医薬品や治療法を販売する会社である。 そして、会社側が日本での承認に消極的なことが、「海外では一般的な治療法でも、日本で健康保険の対象となるのには時間がかかる」主要な原因なのである。 いや、むしろ、「時間がかかる」ことよりも、待てど暮らせど会社側に動きがないことにより、永遠に承認されないことの方が問題だろう。 現状でさえ、消極的なのだから、混合診療を解禁すれば、もっと消極的になるのは明らかだろう。 何故なら、混合診療が解禁されれば、承認なしに新たな医薬品や治療法を販売することが出来るのだから。 会社の立場に立てば、承認が不要になれば、やりたくもない承認手続をやるはずがない。 よって、混合診療を解禁すれば、「今後新しい治療法が保険の対象と認められにくく」なるのは目に見えている。 この「世論調査」の書き方では、その辺りが全く表現されていない。 これに対して、解禁派は、承認を促進する対策をとれば良いと言う。 しかし、言うだけで具体的な方策は提案しない。 そもそも、承認を促進する対策を持ち出せば、解禁論は根底から崩れてしまう。 何故なら、そのような対策が功を奏するなら、混合診療を解禁せずとも、保険診療で必要な治療は全て受けられることになるからだ。 そして、対策が功を奏さないならば、禁止派に対する反論にならない。
貧乏人の医療機会喪失
禁止派の主張の2番目であるが、「貧富の格差が健康の格差を広げてしまう」の意味が書かれていない。 この「世論調査」の書き方では「貧乏人は損もしないが恩恵もない」としか読み取れない。 これでは、貧乏人が金持ちを妬んでいるだけのようにしか見えない。 しかし、禁止派の主張の3番目が正しく理解されていれば、混合診療解禁により貧乏人は確実に損をすることを意味することが分かるだろう。 場合によっては、金持ちも損をする可能性がある。 この「世論調査」の書き方では、その辺りが全く表現されていない。
反論の隠蔽
解禁派の主張として挙げられた意見についても、禁止派の明確な反論があるのだが、それについても紹介されていない。 いや、禁止派の主張の2番目と3番目は、本来、明確な反論になるのだが、この「世論調査」の書き方ではそれが見えて来ない。
国の医療費の削減や民間開放論
解禁派の主張のうち、反発を受けやすいであろう、国の医療費の削減や民間開放論は、何故か、取り除かれている。
一時的かつ限定解禁派(=原則禁止派)の意見
何よりも問題なのは、がん患者団体等が主張する、一時的かつ限定解禁派(=原則禁止派)の意見が全く書かれていないことである。 一時的かつ限定解禁派(=原則禁止派)は、混合診療の問題点を理解しつつも、一刻の猶予もない切羽詰まった状況に置かれて、現実的な答えを求める人達である。 そうした最も現実に即していると思われる意見が一切紹介されていないのでは、極論の二者択一を求めているに過ぎない。
恣意的な選択肢
選択肢には、最も現実的と思われる一時的かつ限定解禁(=原則禁止)がない。 仮に、「やや賛成」「やや反対」が全て一時的かつ限定解禁派(=原則禁止派)であると仮定しよう。 そうすると、全体では57%、「高所得・高資産層」では47.5%、「中間層」では56.6%、「低所得・低資産層」では63.8%が、一時的かつ限定解禁派(=原則禁止派)となる。 とすると、一時的かつ限定解禁(=原則禁止)は「高所得・高資産層」を除いて最大の意見であり、「高所得・高資産層」でも「賛成」に僅か1.7%差まで迫る第二位の意見である。 よって、一時的かつ限定解禁(=原則禁止)の選択肢の有無で、この結果は大きく変わって可能性がある。 つまり、用意された選択肢に不備があるのは明らかだろう。
恣意的な分析
本調査が実施されたのは、2007年11月の保険診療と保険外診療の併用(いわゆる混合診療)の全額自己負担に関する東京地裁の法的判断の約2か月後ということもあり、この影響を受けている可能性が考えられる。 また、郵送調査全般にいえる限界ではあるものの、公的医療費の範囲やそれぞれのメリットやデメリットなど、設問の背景と選択肢ごとの違いについて回答者がどの程度理解した上で判断を行ったのか確認することはできない。 しかしながら、多数の国民が賛意を表明していること、経済力により賛否の傾向が異なるという点で、この結果は十分に検討に値するものであり、今後は医療財源論や医療制度の設計理念などの議論において参考にすべき結果であると考えられる。
「国がこのような対策を実行するために、税金や保険料、窓口で支払う医療費等、負担を増やしてもよいと考えますか?【問7】」と比較すれば、「どの程度理解した上で判断を行ったのか確認すること」は十分に可能である。 例えば、「低所得・低資産層」は【問7】に対して「反対」が33%、「どちらかと言えば反対」が47%、「どちらかと言えば賛成」が16%、「賛成」が1%である。 一方、同じ層が混合診療解禁については、「反対」が7%、「やや反対」が20%、「やや賛成」が43.8%、「賛成」が25.4%である。 混合診療解禁が負担増になるという認識があると仮定すると、両者の結果は明らかに矛盾している。 つまり、ほとんどの「低所得・低資産層」は、混合診療解禁が負担増になるという認識を持っていないことが分かる。 よって、混合診療の理解が十分とは言い難い。 「経済力により賛否の傾向が異なる」とは言っても、負担増を許容するかどうかが意見に反映されていないのだから、「この結果は十分に検討に値する」とは言えない。 だから、これは「参考にすべき結果」に全くなっていない。
「自由記述コメント欄」を見ても、理解の足りていない人が少なからずいることが分かる。
混合診療については認めるべきと考えます。治療を促進させ、いち早く認可する事が(保険適応させる)最大の解決策ではありますが、患者へも選択肢の幅を広げるべきと思います。 すでに歯科では認められているのに医科では認めないのは矛盾しています。
「すでに歯科では認められている」は選定療養のことであろう。 それならば、「治療を促進させ、いち早く認可する事が(保険適応させる)」治療法とは根本的に違う。 そして、選定療養は歯科でなくとも認められている。 そうした現在の保険外併用療養制度について知らず、かつ、「治療を促進させ、いち早く認可する事が(保険適応させる)」治療法と選定療養を混同して論じているのは明らかだろう。 そうした勘違いを「自由記述コメント欄」として採り上げているのだから、主催者は、情報提示が不十分なままアンケートを取った自覚があるはずである。
混合診療の解禁の遅れは、既得権や何かのしがらみによる新展開に支障をきたしている様に思われて仕方ありません。 早く患者の立場に立って欲しい。 裕福な人だけとか、貧富の格差とか言い訳がましく言う人ほど邪魔しているに過ぎない。 お金がなくっても借金しても受けたいものだと思います。
「既得権や何かのしがらみ」とは、常識に逆行し過ぎだろう。 誰が考えても、保険診療より自由診療の方が儲かるに決まっている。 自由診療ならば効果を証明するコストが不要で、かつ、診療報酬や薬価が低く抑えられることもない。 事実、国民皆保険制度のなかった米国では、医療費が日本より遥かに高い。 儲かることを拒否して、儲からないやり方を支持するのは、明らかに「既得権や何かのしがらみ」以外の何かの為であろう。 「患者の立場」に立てば、混合診療は百害あって一利なしである。
以上、「自由記述コメント欄」に、解禁論側の意見として書かれているのは、この2つだけである。 もっとまともな意見があるなら、それが採用されないとは考え難い。 よって、賛成した人には、「公的医療費の範囲やそれぞれのメリットやデメリット」を理解して物を言っている人はほとんど居ないと考えられる。
適切な調査
解禁派、禁止派、一時的かつ限定解禁派(=原則禁止派)の意見を余す所なく、かつ、簡潔にまとめてみた。 そして、それぞれの派の意見が一対一で対応するように並べてある。
項目 | 原則解禁派の意見 | 現行延長派の意見 | 原則禁止派の意見 |
---|---|---|---|
保険外治療 | 患者が受けたい医療を自分で選択する自由を尊重し、自費で受けられるようにすべき。 | 必要な治療法は全て健康保険の対象とすることが患者の選択肢を増やす。混合診療とは別問題。 | 現行延長派の主張が正しいが、ドラッグ・ラグの当面の対策として限定的解禁が必要。 |
医療費負担 | 全ての医療費が全額自己負担となると、個人の医療費負担が非常に大きい。 | 必要な治療法は全て健康保険の対象とすることが患者負担を減らす。混合診療とは別問題。 | 現行延長派の主張が正しいが、ドラッグ・ラグの当面の対策として限定的解禁が必要。 |
治療機会 | 混合診療が金持ちに限定されても、誰も不利益を被ることはない。 | 混合診療を解禁すれば、新しい治療法が承認されなくなり、貧乏人は治療を受ける機会を喪失する(※1)。 | 現行延長派の主張が正しいが、期間限定の解禁であれば、悪影響は最小限に留められる。 |
〃 | 承認制度の“改革”を行なえば国民皆保険制度は良くなる。混合診療の是非とは関係がない。 | 承認制度を“改革”できるなら混合診療を必要とする根本的理由がなくなる。“改革”できないなら解禁派の主張は成り立たない。 | 現行延長派の主張が正しいが、期間限定の解禁であれば、悪影響は最小限に留められる。 |
詐欺や安全性対策 | 医師法や薬事法等の規制を強化すれば良い。混合診療を禁止する必要はない。 | 医師法や薬事法等による規制は役に立っておらず、規制強化を主張するだけでは具体性に欠ける。現状では混合診療禁止が重大な歯止めとなっている。歯止めを廃止するなら具体的対案を示すべき。 | 現行延長派の主張が正しいが、欧米で承認済の治療のみ解禁すれば全く心配はない。 |
〃 | 現行制度でも問題は発生しているから、現行制度(混合診療禁止)は必要ない。 | 現行制度は一定程度の役に立っているかどうかで評価すべきであって100%完璧でないことを理由に不要とするのは暴論。 | 現行延長派の主張が正しい。 |
医療外サービス | 患者が受けたいサービスを自分で選択する自由を尊重すべき。 | 緊急性が乏しい。現在の保険外併用療養費の枠組みで対応可能で、必要があれば対象を拡大すれば良い。 | 現行延長派の主張が正しい。 |
国の医療財政 | 必要な治療法を全て健康保険でまかなうと国の財政負担が際限なく膨らむので、一部の医療費を保険から外すのも止むを得ない。 | 解禁以外の方法で財政改善は可能であり、必要な治療法を保険から外す理由にはならない。 | 現行延長派の主張が正しい。 |
価格競争 | 民間開放で価格競争が促進され、国民の医療費負担は減少する。 | 米国の実例を見れば、民間開放が国民の医療費負担を増やすことは明らか。 | 現行延長派の主張が正しい。 |
企業参入機会 | 自由主義経済の為には公平な参入機会が必要である。 | 自由主義経済よりも、国民の生命の維持の方が重要である。 | 現行延長派の主張が正しい。 |
陰謀論 | (個人意見のみで団体での主張はない)(※2) | 健康保険制度ではろくな利益が出ないので守るべき利権がない。解禁論者こそ混合診療の医療利権を狙っている。 | (主張なし) |
- (※1)海外で一般的な治療法が健康保険の対象となってないのは、製薬会社等が日本向けの治験(=効果の最終証明)を実施しないからである。それは、開発コスト(大部分は効果の証明コスト)が大きい割に健康保険では薬価が安く抑えられることにも一因がある。混合診療を解禁すれば、製薬会社は低コストで高価な自由診療薬ばかりを販売するようになり、高コストで安価な保険対象薬を開発しなくなり、自費診療の出来ない貧乏人は治療を受ける機会を喪失する。
- (※2)個人ブログ等でのみ「混合診療を禁止するのは既得権益にしがみつく者の陰謀である。」とする主張を見掛ける。財源や経営効率の論と矛盾するため、公的機関・企業・患者団体等で陰謀論を主張する団体はない。
このように各派の意見を提示したうえで、次の選択肢から選ぶよう求める。
- 健康保険制度を廃止し、すべての治療法を患者が自由に選択できるようにすべきである。
- 健康保険制度は維持したまま、混合診療を全面解禁すべきである。
- ブラックリストに掲載された混合診療のみを禁止すべきである。
- 無期限ホワイトリスト(一度掲載された治療法は原則削除されない)に掲載された混合診療のみを許可すべきである。
- 期限付ホワイトリスト(評価期間を過ぎた治療法はリストから削除)に掲載された混合診療のみを許可すべきである。
- 現状の評価療養制度(期限付ホワイトリスト+実施条件を満たした病院でのみ許可)の拡充で対応すべきである。
- 評価療養制度を現状維持すれば良い。
- 評価療養制度を廃止し、全ての混合診療を禁止すべきである。
- 混合診療問題よりも、承認制度の改革を急ぐべき。
- 何が良いのか分からない
- その他
尚、評価期間とは、混合診療で使用可能となってから、次のいずれかになるまでの期間とする。ただし、標準治療については、保険局長通達「保険診療における医薬品の取扱いについて」(昭和五五年九月三日保発第五一号)に基づく適応外処方の拡大により対応可能なので除外する。
- 治療法の承認申請がないまま、承認準備に必要な一定の期間が経過した
- 治療法の承認が却下された
- 治療法が保険適用された
これならば、おそらく、3~6,9番目に意見が集中するだろう。
メニュー
素晴らしき国民皆保険制度
医療制度問題
- 混合診療問題に関する誤解
- 混合診療より保険充実がまずありき(MRIC)
- ドラッグラグ・未承認薬の本質と改革案
- 小野俊介准教授による分析
- 使えない承認済医薬品
- 使い難い55年通知(適応外処方)
- 特許制度と医療制度の乖離
- 自由診療の問題
懸念事項
- 混合診療による国民皆保険崩壊の原理
- 混合診療に関わる医療利権
- インチキ療法蔓延の懸念
- 混合診療解禁の必要性はあるか?
それぞれの改革案
マスコミ報道等
- 混合診療社説と言う名のプロパガンダ
- 日本の薬価は高いのか?「薬価の国際比較調査にもとづく医療保険財源提案(薬価の国際比較-2010年薬価の比較調査報告書-)」
- まずは薬価全体を引き上げよ!ニボルマブ(オプジーボ)を下げる前に