国民皆保険崩壊?混合診療解禁?TPPお化け
はじめに
当会(仮)は混合診療を原則禁止することを求めています。 例外は物によります。 当会(仮)はTPPに賛成も反対も表明しません。 ただ、混合診療問題にとって害悪になるTPPと混合診療を結びつけるデマを否定するだけです。 この手のデマは、賛成派にとっても反対派にとっても、真面目な議論において害悪にしかなりません。 当サイト内のページは、引用部分を除いて、悪用しない限り、無断転載しても結構です。 引用部分は引用元に著作権があります。
前書き
TPPが国民皆保険制度を潰し、混合診療を解禁させるとする主張を展開する者が複数居るが、いずれの主張も根拠がないTPPお化けである。 結論を先に言えば、混合診療を解禁すれば国民皆保険制度は確実に崩壊するが、TPPと混合診療は関係がない。 ISD条項とネガティブリスト&補助金は別サイト参照。
- 間違ったTPP賛成論
- サルでもわかるTPP
- ISD条項
- ISD条項詳細解説
- ネガティブリストのデマ
- 関税はネガティブリスト方式である。
- 非関税障壁以外の経済障壁も含めて全てにネガティブリスト方式を採用すると決まったわけではない。
- グリーン補助金はWTOでも問題視されていない。
- 米国も農業補助金の廃止には反対している。
- 米国の陰謀?TPPお化け
- デマを流布する一派の主張する陰謀論の内容は、あまりに荒唐無稽すぎて笑える。
- TPPリテラシー
| デマ | 真実 | |
|---|---|---|
| 非関税障壁 | 外国から見れば国民皆保険制度は非関税障壁である。 | 内国民待遇違反とならない国民皆保険制度は非関税障壁ではない。 |
| 自由化圧力 | TPPで医療自由化圧力がかけられる恐れがある。 | 筋違いの圧力が通用するなら、TPPに参加してもしなくても結果は同じ。 |
| ISD条項 | 投資家が損害を受けたとして訴えれば国民皆保険制度は潰される。 | 内国民待遇違反とならない国民皆保険制度はISD条項では潰せない。 |
| 米国の要求 | 米国政府の資料に医療自由化要求がある。 | 一定の規制改革を求めているが自由化までは要求していない。 |
昨今の報道について
日本の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加をめぐり、米通商代表部(USTR)が、国民皆保険など日本の公的保険制度の変更を求めない意向を示していることが19日、明らかになった。 一方、自動車や民間保険分野をめぐっては、米側の業界団体などが日本に市場開放を強く求めている。 TPP交渉参加に向け、政府は月内にも米政府との事前協議に入る考えだが、協議を前に個別分野の駆け引きが活発化してきた。
訪米中の西村康稔衆院議員(自民党)によると、USTR日本担当のカトラー代表補が現地時間18日、西村氏に対し「日本の皆保険制度について米国が何かを言うことはない」と明言。公的保険に“介入”しない意向を示したという。
「全面解禁が国民皆保険制度の崩壊につながるとの日本国内の懸念に配慮して譲歩した格好」とする報道もあるが、それは勝手な想像だろう。 「医薬品へのアクセスの拡大のためのTPP貿易目標(仮訳)」を読めば分かる通り、米国は、初めから、「国民皆保険など日本の公的保険制度の変更」など求めていない。 「日本の皆保険制度について米国が何かを言うことはない」は以前からの姿勢を改めて表明しただけであって、何らかの譲歩を示したわけではないのである。 米国は他の項目では譲歩しない姿勢を示しており、一項目だけ譲歩したと考える理由もない。
とはいえ、「日本の皆保険制度について米国が何かを言うことはない」ことが改めて明らかになったのであれば、それはそれで良いことだろう。 また、この報道により、TPPを混合診療解禁に悪用しようとする連中にも釘を刺すことができた。 米国と西村康稔議員GJ!である。
原則論
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、経済連携協定であって、自由内政干渉協定ではない。 経済連携協定は、国境を跨ぐことによる経済障壁(関税、非関税障壁)をなくすための協定であるが、全ての経済障壁をなくすための協定ではない。 経済障壁は次のように分類できる。
- 関税
- 非関税障壁
- 経済連携協定の対象
- 経済連携協定の対象外
- これら以外の経済障壁(内国民待遇の原則に反する余地がないもの。例:消費税、公的医療保険)
内国民待遇(相手国の国民や企業を自国民と対等に扱うこと)の原則に反しないものは非関税障壁ではない。
非関税障壁(ひかんぜいしょうへき)とは、関税以外の方法によって貿易を制限すること。 または、その制限の解除要件のことである。非関税措置と呼ぶこともある。
具体的には、輸入に対して数量制限・課徴金を課す、輸入時に煩雑な手続きや検査を要求する事。 または国内生産に対して助成金などの保護を与える事などによって行われる。
また拡大解釈的には、輸出入に不平等な結果をもたらす、国特有の社会制度や経済構造を含む場合がある。
ただし、各国の政策の都合による経済障壁が全て経済連携協定の対象外とみなされるわけではない。 内国民待遇の原則に反するもの、すなわち、外国企業にのみ不利に働く経済障壁であれば、その程度によって経済連携協定の対象になる。 何故なら、政策の都合を口実にして外国企業を排除する行為を無制限に許しては、協定が形骸化してしまうからだ。
日本の公的医療保険制度は、外国企業の排除を目的としておらず、かつ、国内企業も外国企業も完全に対等に扱う。 だから、日本の公的医療保険制度は内国民待遇の原則に反しないので、非関税障壁にあたらない。 国内産業にとって特別に有利になる仕組みがないのだから、政策の都合を口実にした協定の抜け道にもならない。 だから、TPPにおいて日本の国民皆保険制度の廃止を求めたり、混合診療の解禁を求めるのは、全くの筋違いである。 筋違いの要求なら、断固とした態度で拒絶すれば良いだけである。
真に警戒すべきは、TPPではなく、医療自由化圧力そのものである。 TPPが口実にならない圧力であれば、TPPを警戒する必要は全くない。 何故なら、口実にならないのであれば、その圧力にとってTPPは何の役にも立たないからである。 TPPが何の役にも立たないのに圧力に屈してしまうなら、TPPがなくても圧力に耐えられるはずがない。 口実の成り立たない筋違いの圧力が通用するなら、TPPに参加してもしなくても同じである。 医療自由化圧力には警戒する必要はあっても、TPPを警戒する必要は全くないのだ。
米国の圧力が良く問題にされるが、その米国は、医療保険改革法を成立させ、国民皆保険制度を導入しようとしているのである。 TPPは不平等条約ではないのだから、他国の国民皆保険制度を潰すなら、自国の国民皆保険制度も潰さなければならない。 国民皆保険制度を公約としているオバマ政権に、そんな真似が出来るわけがない。 オバマ政権が交替しても、少なくとも、民主党政権である限り、その状況に変化はない。 共和党政権に代わっても、導入したばかりの国民皆保険制度を闇に葬り去るのは難しいだろう。
仮に、米国が日本の医療保険制度を破壊しようとしていたとしても、他の参加国と協調してそれを阻止すれば良いだけである。 TPPの既参加国および参加交渉国にも公的医療保険を導入している国がある。
2009年版に収録されている医療アクセスに関する新たなデータによれば、米国、メキシコ、トルコを除く全てのOECD諸国では基本的な保健医療サービスを対象とする国民皆保険制度かそれに近い制度が整備されていることがわかります。
これによれば、既加盟国ではニュージーランドに、交渉中の国ではオーストリアに「国民皆保険制度かそれに近い制度」が整備されている。
たとえば、オーストラリアの医療保険制度は税金を財源とする国民皆保険制度であり、日本よりも進んでいる。
1984年に創設されたメディケア制度は、国民全般を対象とした医療保障制度で、国費による医療費の一定割合の支給(メディケア給付)と、公立病院の入院費用の全額公費負担を2本の柱としている。
財源に関して、制度運営に係る費用は一般財源とメディケア税(個人課税所得の1.5%。メディケア関連支出の約25%を占める)によって賄われているが、州立病院の場合には州政府がその運営費用の多くを分担している。
給付内容は、外来の場合、医療費として政府の定める診療報酬表にある規定料金の85%がメディケア給付として支給され、残りの15%が自己負担となる(なお、1回の診療につき、57.50豪ドルが自己負担の上限)。 ただし、2005年よりGP(一般開業医)による診療に係る医療費については100%メディケア給付(自己負担ゼロ)となった。公立病院に入院の場合は、医療費、病院費用(ベッド代、看護料)などの入院に係るすべての費用が公費により負担され、自己負担はない。 ちなみに、公立病院でも患者が自ら指名した医師から診療を受ける場合、医療費の25%が自己負担となり、病院費用は給付の対象とならない。
2004年に導入された医療費セーフティ・ネット制度により、医療費における患者の自己負担額が年間で一定額を超えた場合に、それ以降の自己負担額の8割を政府が負担する。 一定額の上限は、年間1,000豪ドル(年金生活者等低所得者は年間500豪ドル)である。
仮に、公的医療保険を潰そうとする圧力があったとしても、これらの国と協調して公的医療保険を守れば良い。 ただし、将来的に医療制度を統一しようとする動きは出てくるかも知れない。 しかし、各国間の制度の差が大き過ぎるため統一することは容易ではない。 統一されるとすれば、医療制度よりも特許制度の方が先であろう。 特許制度は、医療分野に限らず、あらゆる工業分野に多大な影響をもたらす制度であるので、統一によって得られる経済利益は医療制度の比ではない。 実際、各国間の独立した特許制度は開発企業にとって大きな負担になっており、特許法の方式面での調和を図る特許法条約が採択された。 しかし、現実には、ようやく、米国が他国に合わせて先出願主義に変更しようとしている最中であって、未だに「単一の世界特許制度」どころか相互承認すら実現していない。
経済のグローバル化の進展に伴い、多数国で特許を取得する必要性が一層高まり、一つの特許出願を複数国に出願するケースが急激に増加している。 ところが、現在の特許制度は、属地主義に基づき各国が独自に制度を構築し運用することを基本としており、出願人が複数国で特許を取得するには、各国ごとに特許出願手続を行う必要がある。 したがって、複数国での特許取得の必要性が高まるにつれ、①手続や特許要件が各国ごとに異なること等に起因する手続上の負担、②グローバルに特許を取得するためのコストが高いこと、③先行技術調査や審査が重複して行われること、④手続が煩雑であること等の問題が顕在化してきている。
これらの問題に対する理想的な解決策は「単一の世界特許制度」の実現であるが、政治・社会・司法制度が各国で大きく異なる現状では、それは極めて実現性に乏しい。 そこで単一特許制度でなく、デファクトに世界特許を実現する考え方として、ある国で与えられた特許権を基に他国においても特許権を与える相互承認の考え方がある。 相互承認の方が、単一の世界特許制度よりはるかに実現可能性があるものの、現実には、主権、言語の壁があり、直ちに実現することは困難である。 しかしながら、このような目的に沿って先行技術調査・実体審査の重複の排除等、現実的な対応を一歩一歩進めていくことが必要である。
世界知的所有権機関(WIPO)における特許法の実体面についての国際的調和の議論は、米国の先発明主義への固執により1994年1月以降凍結されていたが、2000年6月に特許法の方式面での調和を図る特許法条約(PLT:PatentLawTreaty)が採択されたことを契機として、同年11月のWIPO特許法常設委員会(SCP:StandingCommitteeontheLawofPatents)第4回会合において、特許法の実体面における調和についての議論を再開することが合意された。
特許制度ですらこの有様なのだから、医療制度の統一などは夢のまた夢だろう。 仮に、医療制度が統一される日が来たとしても、それによって国民皆保険制度がなくなるとは考え難い。 公的医療機関を既に導入している各国が、自国内の世論の反対を押し切ってまで、保険制度の廃止の方向で合意することは不可能だろう。
外国企業の国内進出
国民皆保険制度の崩壊・混合診療の解禁と外国企業の国内進出を同一視することも典型的なTPPお化けである。 既に述べた通り、公的医療保険制度は内国民待遇に反しないのだから、外国企業の国内進出とは別問題である。 難病患者にとって、混合診療の解禁は百害あって一利なしであるが、外国企業の国内進出は願ってもない大きな利益をもたらす。
ドラッグラグ・未承認薬が発生するのは、日本の医療市場が魅力に乏しいことに一因がある。 米国では、コストの掛かる治験は製造承認の時だけで良い。 一方、日本では、効能を拡大する度に治験を行なわなければならない。 加えて、医療財源の都合により、薬価を含む医療費が安く抑えられる。 そのため、日本の医療市場ではコストが高いのに売上が抑えられるため利益が少ない。
欧米企業から見れば、通貨、言語、物理的距離の壁に加えて国家による規制のある日本市場は、欧米市場に比べて魅力に乏しい。 一方、日本企業から見れば、国家による規制のある日本市場と通貨、言語、物理的距離の壁のある欧米市場との比較になる。 結果として、日本企業が嫌でも自国市場を無視できないのに対して、欧米企業は無理して日本市場に参入する必要性に乏しい。 そのため、欧米で随分前から標準治療となっているものですら、日本ではなかなか承認されないのである。
外国企業の国内進出が促進されるのであれば、ドラッグラグ・未承認薬の問題は今よりも改善されると期待される。 それならば、難病患者にとっては極めて喜ばしいことである。 TPPによって外国企業の国内進出が促進されるのであれば、難病患者にとっては反対する理由がない。
米国政府が、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で獲得する目標を列挙した資料に、公的医療保険制度の運用について「透明性と公平な手続きの尊重を求める」と明記し、同制度の自由化を交渉参加国に要求するとの方針を示していたことが分かった。
どうして「透明性と公平な手続きの尊重を求める」が自由化の要求になるのか。 「透明性と公平な手続き」が意味することはひとつではない。 たとえば、何を保険給付の対象とするかを適正に決めることも「透明性と公平な手続き」である。 内国民待遇に違反しない証拠を出せ(薬事承認の手続を公開しろ、外国企業に不利益な取り扱いをするな)と要求するなら、何らおかしな要求ではない。 それによって外国企業の国内進出が促進されるのであれば、むしろ、難病患者にとっては願ったり叶ったりである。 このように「透明性と公平な手続き」では、何が言いたいか曖昧であり、自由化の要求とは結論付けられない。 いったい、何を根拠に「透明性と公平な手続きの尊重を求める」が自由化の要求だとしたのか。 「薬価の決定方法が交渉対象になる」としても、国内企業よりも外国企業を優遇するよう求められたり、内国民待遇に関係しない内政干渉であるならば、その要求は協定の趣旨に反する。 協定の趣旨に反する要求であるならば、断固とした態度で拒絶すれば良いだけである。
米国政府がTPP交渉で、公的医療保険の運用で自由化を求める文書を公表していたにもかかわらず、日本政府が「公的医療保険制度は交渉の対象外」と国民に説明していた問題で、小宮山洋子厚生労働相は27日、「9月16日に外務省を通じて受け取っていた」と述べ、入手していたことを明らかにした。 公的医療制度の根幹である薬価の決定方法が交渉対象になる可能性も認めた。
外務省を通じて受け取っていたとする「公的医療保険の運用で自由化を求める文書」とやらについては、9項目の重点項目があるそうだが、それら全てを説明した新聞記事が見当たらなかった。 そこで、外務省のサイトを直接参照する。
1.革新的医薬品・ジェネリック医薬品へのアクセスの、「TPPアクセス・ウィンドウ」を通じた迅速化
医薬品限定の知的財産の保護の申請に際して、合意される期間内に発明者がTPP域内市場に医薬品を供給することを条件付けることにより、TPP域内市場への生命を救い延ばす医薬品の供給を促進すると同時に、同市場にジェネリック医薬品が可能な限り早期に参入する途をひらく。
2.ジェネリック医薬品の製造業者にとっての法的予見性の強化
発明者の知的財産の保護とのバランスを維持しつつ、特許の例外とジェネリック医薬品に対するインセンティヴを通じて、TPP全域においてジェネリック医薬品製造業者にとっての法的予見性を強化する。
3.医薬品に対する関税撤廃
医薬品及び医療機器にかかる関税を即時撤廃することにより、特に病院、診療所、援助機関及び消費者にとってのコストを低減する。 例えばアモキシシリン、ペニシリン及び抗マラリア薬にかかる現行関税の撤廃も、これには含まれる。
4.税関における障壁の低減
差別的、高負担また予見可能性のない税関手続きといった、革新的医薬品及びジェネリック医薬品へのアクセスを妨げる輸入障壁を最少化する。
5.模倣医薬品の貿易阻止
不正商標を付した医薬品のTPP各国の市場への流入を防止するため、税関及び刑事上の執行措置を利用可能とし、それにより、かかる偽医薬品が患者にもたらす重大な危険を手当てするためのTPP諸国の取り組みを支援する。
6.各国内における医薬品の流通障壁の低減
医薬品に関する輸入、輸出及び流通の権利を保証し、必要とする者への医薬品の効率的流通の妨げとなり得る国内障壁を最少化する。
7.透明性と手続きの公平性の強化
ジェネリック医薬品及び革新的医薬品双方がTPP各国の市場に参入する最も公正な機会を確保するため、政府の健康保険払戻制度の運用において透明性と手続きの公平性の基本規範が尊重されることを求める。
8.不要な規制障壁の最小化
TPP域内での規制の今後の一貫性を促進しつつ、安全で有効な医薬品の公衆にとっての利用可能性を高めるため、透明で無差別な規制構造を促進する。
9.TRIPS及び公衆衛生に関するドーハ宣言の再確認
TRIPS及び公衆衛生に関するドーハ宣言に基づく公衆衛生措置の利用可能性に関する重要な理解を織り込む。
最期のドーハ宣言だけ予備知識が必要となるので資料を引用しておく。
発端は、WTO/TRIPS理事会において医薬品アクセス問題を取り上げるべきであるとの主張がアフリカからなされたことによる。 アフリカ諸国においてHIV/AIDS、結核、マラリアといった感染症の被害が深刻な状況にありなかなか改善されないのは、医薬品が高くて入手できないためであり、医薬品が高価なのは特許が原因である、という訳である。
この主張は、ある意味シンプルで分かりやすいこともあり、多くの途上国そしてNGOの支持を得て、TRIPS理事会における大きな論点となっていく。 そして非難の矛先は、高価な医薬品を製造販売しているとして、先進国、即ち、米国、ヨーロッパ、そして日本に向いた。
これに対し、先進国側は、医薬品の価格における特許料の占める割合は必ずしも大きくはない、感染症の問題は特許といった知的財産権のみの問題ではなく総合的な対策が必要である、多くの製薬企業が無料あるいはきわめて安い価格でHIV/AIDS薬を途上国などに提供している例があるなどとした。 更に、医薬品の開発には膨大な研究開発投資が投入されており、これを医薬品価格に反映させて回収しないことには、更なる新薬開発が出来なくなってしまい、研究開発のインセンティブを欠いてしまい、将来の新薬開発を阻害しかねないともした。
ドーハ特別宣言は、強制実施権の許諾の理由としてHIV/AIDS、結核、マラリアといった感染症が理由となりうることを認めた、という一定の成果があったものの、最も感染症被害に困っている生産能力のない国に対する問題についてはその解決を閣僚会議後の議論に委ねた。 ドーハ特別宣言は7つのパラグラフから構成されており、その概要については、本稿末を参照ありたいが、途上国等を苦しめている公衆衛生問題の重大さ、知的財産権の医薬品価格への影響への懸念といった側面に触れる一方、知的財産保護が新薬開発のために重要であるという観点も盛り込んでおり、途上国寄り一辺倒ではなく、先進国の主張にも一定の配慮がされた形になっている。
6.強制実施権
本来特許発明の使用には特許権者の許諾が必要であるが、一定の条件下において特許権者の許諾を得なくても特許発明(例えば医薬品)を使用する権利を第三者に認めることができる場合がある。
このような権利を強制実施権という。 ドーハ閣僚会議の宣言では、HIV/AIDS等も強制実施権を認める際の条件となり得るとなっている。
つまり、HIV/AIDS、結核、マラリア等の治療薬について、発展途上国は、強制実施権を行使してコピー薬を作ってもよいということである。
では、どの部分が「公的医療保険の運用で自由化を求める」内容なのか? 1は新薬やジェネリック医薬品の早期承認。 2は特許権絡みの件。 3,4は関税と輸入障壁。 5はコピー医薬品の禁止。 6は「効率的流通の妨げとなり得る国内障壁」。 7,8は手続き・規制の透明性と公平性。 9は医薬品アクセスにおける強制実施権。 この中で可能性があるのは6の「効率的流通の妨げとなり得る国内障壁」と8の「TPP域内での規制の今後の一貫性を促進」くらいである。
「効率的流通の妨げとなり得る国内障壁」の「効率的」は何を意味するのか。 現在の国民皆保険制度や混合診療禁止政策を非効率としているのか。 8で「透明で無差別な規制構造を促進する」と、条件を満たす規制の存続を前提としていることから見て、規制であることだけを理由に非効率とされるとは考え難い。 また、3の「特に病院、診療所、援助機関及び消費者にとってのコストを低減する」との整合性を考えれば、国民負担が増大する混合診療の解禁を「効率的」と考えるのも早計だ。 常識で考えて、安全性・有効性のための手続、公的医療保険制度の財政上の都合、国民負担の軽減のために最低限必要な規制は医薬品アクセスを効率化するための制度であり、それらは「効率的流通の妨げ」の対象外だろう。 ただし、評価療養の対象の少なさは「効率的流通の妨げ」と見なされる可能性があるが、これは評価療養の対象を拡大すれば済むことである。
「TPP域内での規制の今後の一貫性」が何を意味するのも不明だが、これが、加盟国間の制度統一を意味するならば、今直ぐには合意困難な項目だろう。 即座に実施する旨の文言も無い(関税撤廃の項目にはある)ことから、どの国の制度に合わせるかの議論が長期化することを想定していると読める。 そして、「透明で無差別な規制構造を促進する」としていることから、制度統一後も一定の規制が残ることを前提としている。
以上、一定の規制改革を求めてはいるが、「公的医療保険の運用で自由化を求める」文言は一切なく、混合診療解禁を求めるものでもない。 1などは難病患者として歓迎すべき項目である。 評価療養の対象の拡大や承認および薬価決定プロセスの透明化なども見込まれるが、いずれも難病患者として歓迎すべきことである。 製薬会社の立場ではともかく、患者の立場で損になる項目は1つもない。 真に警戒すべきは米国の圧力ではなく、日本国内の利権団体の圧力だろう。 日本国内の利権団体によって米国の圧力が歪められば、患者にとって不利益な制度が導入される危険性が高い。 TPP交渉団には「前の米国ばかり見てないで後ろから撃たれないように警戒しろ」と。
とはいえ、外国企業の国内進出は、国内医療産業の空洞化を引き起こす危険性はある。 医薬品産業が空洞化すれば、何らかの疾病が流行したときに、その治療薬が日本で入手し難くなる状況が発生しかねない。 また、新規の伝染病が発生したとき、生物由来製剤の輸入を禁止して上陸を水際で防ぐことが期待できるが、それは医薬品産業が空洞化していたら不可能である。 国内医療産業の空洞化は、そうした有事の懸念材料とはなる。 しかし、難病分野の治療では、平時ですら欧米に大きく遅れてしまっている。 平時でも患者の生存権が脅かされているのに、有事の心配するのは本末転倒であろう。
知的財産権
そこで、まず知財についてお伺いしたいと思いますが、先ほど申しましたように、TPPというのは通商条約の域を超えて国家社会を揺るがしかねないような大きな条約の枠組みになるわけであります。 例えばWTOの知財に関するTRIPS協定と比べますと、TPPの条文でアメリカが案として出している知財条項案はTRIPS協定を超えて極めて厳格で広範に規定をするものであります。
例えば医療や医薬品、もう多くのお話出ております。 社会保障分野でさえ、医薬品や医療のやり方に特許を付すことによって社会保障分野でのサービス提供すら社会政策として自由にできなくなるおそれがある、これがTPPの知財条項であります。 薬価上昇のおそれ、例えばアメリカの製薬会社が特許を取れば、日本の国産品のジェネリック製品の薬品の生産が滞ってくる。 そうすると、中には高価な薬価で薬を買えない患者さんが出てくるわけですね。 抗がん剤やC型肝炎治療薬などは薬価が上がって、ジェネリック医薬品が入らないと薬を買えない人たちが出てくる。
「極めて厳格で広範」が何を指すのか説明していないので、佐藤議員が何を言いたいのかサッパリ分からない。 事実はどうやら、次のようなものらしい。
世界の非政府組織や学界のグループが、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は、TPP参加国における手頃な価格のジェネリック医薬品へのアクセスを危うくすると、「すべての者の最高レベルの保健基準享受への権利に関する国連特別報告官」に訴えている。 グループのアナンド・グローバー特別報告官に宛てた公開書簡によると、TPPの知的所有権の章に関する米国提案が受け入れられば、安価なジェネリック医薬品をブランド医薬品を供給できない国が生産したり、輸入したりすることが難しくなる。
http://keionline.org/sites/default/files/r2h_anand_grover_tpp_22march2011.pdf
WTO協定(TRIPS)は、ジェネリック医薬品を生産する企業がその製品の承認を得る際、対応するブランド医薬品にかかわる臨床データを使用することを許容している。 ところが、TPP交渉で提案されている条項は、製薬企業に対して臨床試験データへの排他的権利を与えている。 TPP参加国のジェネリック薬品製造者は、製品の効能を証明するために、まったく新しい試験を行わねばならないことになるという。
Pacific free-trade agreement 'threat to generic drugs',SciDev,4.12
薬事法施行規則第四十条第二項では、再審査期間(6〜10年)を過ぎた医薬品と同一成分の医薬品については、承認申請時に治験データを提出しなくて良いことになっている。 米国の提案は、既存薬と同一成分の医薬品のについて、例外なく治験データの提出を求めるよう法改正を求めたものと思われる。 これが事実であるとすると、考えられる影響は次のとおり。 ただし、既に承認済みのジェネリック医薬品には影響がない。
- 治験費用の分だけジェネリック医薬品の価格が上がる
- 売上が少ない医薬品は、ジェネリック医薬品が登場しない
治験が必要になれば、ジェネリック医薬品の開発コストは大幅に上がり、ジェネリック医薬品専門の製薬会社にとっては負担になるだろう。 ただし、それでも、オリジナルの医薬品に比べれば、開発コストは少ない。 というのも、オリジナルの医薬品の開発では候補物質を虱潰しに調べなければならないからだ。 開発の成功確率は1万分の1程度とされるが、それだけ確率が低いと特許手続費用や前臨床段階でのコストの馬鹿にならない。 臨床試験段階に達した物でも100%成功が保証されているわけではない。 成功に至るまでの全ての失敗のコストが1つの医薬品の開発コストとなるので、オリジナルの医薬品の開発費コストは膨大なものになる。 それに比べて、成功がほぼ約束されているジェネリック医薬品の開発コストは少ない。 とはいえ、中小企業にはかなり厳しい負担であろう。
開発コストが高くなれば、製薬会社は、元が取れそうもないジェネリック医薬品の開発を見送ることになるだろう。 たとえば、希少疾病薬などは、オリジナルの医薬品の独占状態が長く続くと予想される。 しかし、これは、必ずしも、患者にとってはデメリットではない。 というのも、国民皆保険制度では、患者の個人負担は少ないからである。 高額療養費制度によって、価格の高い治療については、薬価等がいくら上がっても患者負担は殆ど変わらない。 また、難病として特定疾患に指定された疾病は、国が治療費のほとんどを負担してくれる。 価格面で問題になるとすれば、国の医療財政であろう。 これは、経済発展による税収増と国の医療費支出増のどちらが大きいかという比較になる。 また、医療財政的には多少厳しくなったとしても医療財政改革によって十分に対応可能な問題であろう。
難病患者の立場に立てば、この米国提案はドラッグラグ・未承認薬問題の解決策の一端となる可能性がある。 ドラッグラグ・未承認薬問題を解決するために必要なことは、日本の医薬品市場を製薬会社にとって魅力的にすることと特許切れ未承認薬の特例措置が必要である。 この米国提案は、前者の具体案のひとつとなる。 オリジナルの医薬品を開発する会社の立場に立てば、ジェネリック医薬品は自社製品の開発コストの回収を妨げる要因となる。 とくに、希少疾病薬等の売上の少ない医薬品においては、開発コストが充分に回収されないうちに特許切れになる可能性が高い。 そうした売上の少ない医薬品において、ジェネリック医薬品の開発が見送られるなら、オリジナルの医薬品の開発リスクが大きく低下する。 そうすると、製薬会社にとって、希少疾病薬市場が魅力的なものとなり、医薬品を開発する動機が高まる。 これは「公的医療保険の運用で自由化を求める文書」における「発明者の知的財産の保護とのバランスを維持しつつ」が意味することだろう。 これは難病患者にとっては大いに歓迎すべきことである。
仮に、この提案に問題があるとしても、各国間の制度差は非関税障壁ではないので、断固とした態度を取れば拒否することは可能であろう。
そして、もう一つ非常に驚く点は、医療の治療方法の特許なわけであります。 日本の場合には、大学病院があって医局があって、それぞれ病院、医局によって患者さんを治療する方法というのは違う場合があるんです。 ところが、このTPPの知財条項の米国案によりますと、それぞれの患者さんの治療方法というトータルな方法のパッケージについて特許を付すると、そういう条項が付いているわけであります。
まず、この要望を受け入れても、既存の技術については対象外である。 特許制度と医療制度の乖離にも説明してあるとおり、新規性のない発明には特許が取れないため、既にある技術は特許の対象とならない。 新規性を特許の条件とする規定は米国にもあるので、新規性を条件から外せとする要求が出てくることはまずない。 そもそも、先願主義では、新規性を条件から外してしまうと、誰に発明の優先権があるのか特定することができないため、特許制度の根幹が揺らいでしまう。 米国は先発明主義だったが、2011年9月に先願主義に変更する法案を可決したばかりである。他の国も殆どが先願主義を採用している。 以上のように、これから発明される技術だけが対象となるのだから、日本も米国も完全に対等なのである。 経済問題としては、日本企業も米国企業と同様に特許を取れば良いだけである。
また、病院や患者にとっては、治療方法が特許の対象になっても大した問題はない。 どんな商品であっても、ライセンス代金は商品価格に転嫁している。 何らかの方法で商品価格等に転嫁せずに企業が自腹を切るケースは存在しない。 医療分野においても、医薬品には特許が認められているが、医薬品のライセンス代金は薬価に含まれており、病院が自腹を切ることはない。 また、国民皆保険制度では、仮に、ライセンス代金が法外な金額になったとしても、高額療養費制度があるから患者の負担は殆ど増えない。 また、難病として特定疾患に指定された疾病は、国が治療費のほとんどを負担してくれる。 以上のことについて、治療方法のライセンス代金だけが例外になるとする根拠は何処にもない。 よって、治療方法が特許の対象になっても、病院側の持ち出しは0円であり、患者負担も殆ど増えないと考えられる。 交渉次第で薬価差益ならぬライセンス差益が得られる可能性があり、病院側の負担が軽減される可能性もある。 価格面で問題になるとすれば、国の医療財政であろう。 これは、経済発展による税収増と国の医療費支出増のどちらが大きいかという比較になる。 また、医療財政的には多少厳しくなったとしても医療財政改革によって十分に対応可能な問題であろう。
ちなみに、米国では
医師等による医療行為には原則として特許権を行使することができない旨が規定されている(米国特許法第287条(c)(1))
産業上の利用可能性 - Wikipedia
ということなので、米国と同じ制度を求められているなら、医師の医療行為には特許権を行使できないはずである。
仮に、この提案に問題があるとしても、各国間の制度差は非関税障壁ではないので、断固とした態度を取れば拒否することは可能であろう。
外資系病院の参入
外資系病院の参入が国民皆保険制度の崩壊や混合診療の解禁につながるとするのも典型的なTPPお化けである。 病院開設の規制については医療法に規定されている。
医療法 第四章 病院、診療所及び助産所
第一節 開設等
第七条 病院を開設しようとするとき、医師法 (昭和二十三年法律第二百一号) 第十六条の四第一項の規定による登録を受けた者 (同法第七条の二第一項の規定による厚生労働大臣の命令を受けた者にあつては、同条第二項の規定による登録を受けた者に限る。以下「臨床研修等修了医師」という。) 及び歯科医師法 (昭和二十三年法律第二百二号) 第十六条の四第一項の規定による登録を受けた者 (同法第七条の二第一項の規定による厚生労働大臣の命令を受けた者にあつては、同条第二項の規定による登録を受けた者に限る。以下「臨床研修等修了歯科医師」という。) でない者が診療所を開設しようとするとき、又は助産師 (保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第十五条の二第一項の規定による厚生労働大臣の命令を受けた者にあつては、同条第三項の規定による登録を受けた者に限る。以下この条、第八条及び第十一条において同じ。) でない者が助産所を開設しようとするときは、開設地の都道府県知事 (診療所又は助産所にあつては、その開設地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては、当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長。第八条から第九条まで、第十二条、第十五条、第十八条、第二十四条及び第二十七条から第三十条までの規定において同じ。) の許可を受けなければならない。
2 病院を開設した者が、病床数、次の各号に掲げる病床の種別 ((以下「病床の種別」という。) その他厚生労働省令で定める事項を変更しようとするとき、又は臨床研修等修了医師及び臨床研修等修了歯科医師でない者で診療所を開設したもの若しくは助産師でない者で助産所を開設したものが、病床数その他厚生労働省令で定める事項を変更しようとするときも、厚生労働省令で定める場合を除き、前項と同様とする。
一 精神病床 (病院の病床のうち、精神疾患を有する者を入院させるためのものをいう。以下同じ。)
二 感染症病床 (病院の病床のうち、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第六条第二項に規定する一類感染症、同条第三項に規定する二類感染症(結核を除く。) 、同条第七項に規定する新型インフルエンザ等感染症及び同条第八項に規定する指定感染症(同法第七条の規定により同法第十九条又は第二十条の規定を準用するものに限る。)の患者 (同法第八条(同法第七条において準用する場合を含む。)の規定により一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症又は指定感染症の患者とみなされる者を含む。)並びに同法第六条第九項に規定する新感染症の所見がある者を入院させるためのものをいう。以下同じ。)
三 結核病床 (病院の病床のうち、結核の患者を入院させるためのものをいう。以下同じ。)
四 療養病床 (病院又は診療所の病床のうち、前三号に掲げる病床以外の病床であつて、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるためのものをいう。以下同じ。)
五 一般病床 (病院又は診療所の病床のうち、前各号に掲げる病床以外のものをいう。以下同じ。)
3 診療所に病床を設けようとするとき、又は診療所の病床数、病床の種別その他厚生労働省令で定める事項を変更しようとするときは、厚生労働省令で定める場合を除き、当該診療所の所在地の都道府県知事の許可を受けなければならない。
4 都道府県知事又は保健所を設置する市の市長若しくは特別区の区長は、前三項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が第二十一条及び第二十三条の規定に基づく厚生労働省令の定める要件に適合するときは、前三項の許可を与えなければならない。
5 営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、前項の規定にかかわらず、第一項の許可を与えないことができる。
第七条の二 都道府県知事は、次に掲げる者が病院の開設の許可又は病院の病床数の増加若しくは病床の種別の変更の許可の申請をした場合において、当該申請に係る病院の所在地を含む地域 (当該申請に係る病床が療養病床又は一般病床(以下この条において「療養病床等」という。)のみである場合は第三十条の四第一項の規定により当該都道府県が定める医療計画(以下この条において単に「医療計画」という。) において定める第三十条の四第二項第九号に規定する区域とし、当該申請に係る病床が精神病床、感染症病床又は結核病床 (以下この項において「精神病床等」という。)のみである場合は当該都道府県の区域とし、当該申請に係る病床が療養病床等及び精神病床等である場合は同号に規定する区域及び当該都道府県の区域とする。) における病院又は診療所の病床の当該申請に係る病床の種別に応じた数 (当該申請に係る病床が療養病床等のみである場合は、その地域における療養病床及び一般病床の数) が、同条第五項の厚生労働省令で定める標準に従い医療計画において定めるその地域の当該申請に係る病床の種別に応じた基準病床数 (当該申請に係る病床が療養病床等のみである場合は、その地域における療養病床及び一般病床に係る基準病床数) に既に達しているか、又は当該申請に係る病院の開設若しくは病床数の増加若しくは病床の種別の変更によつてこれを超えることになると認めるときは、前条第四項の規定にかかわらず、同条第一項又は第二項の許可を与えないことができる。
一 第三十一条に規定する者
二 国家公務員共済組合法 (昭和三十三年法律第百二十八号) の規定に基づき設立された共済組合及びその連合会
三 地方公務員等共済組合法 (昭和三十七年法律第百五十二号) の規定に基づき設立された共済組合
四 前二号に掲げるもののほか、政令で定める法律に基づき設立された共済組合及びその連合会
五 私立学校教職員共済法 (昭和二十八年法律第二百四十五号) の規定により私立学校教職員共済制度を管掌することとされた日本私立学校振興・共済事業団
六 健康保険法 (大正十一年法律第七十号) の規定に基づき設立された健康保険組合及びその連合会
七 国民健康保険法 (昭和三十三年法律第百九十二号) の規定に基づき設立された国民健康保険組合及び国民健康保険団体連合会
八 国の委託を受けて健康保険法第百五十条及び船員保険法 (昭和十四年法律第七十三号) 第百十一条の施設として病院を開設する者
2 都道府県知事は、前項各号に掲げる者が診療所の病床の設置の許可又は診療所の病床数の増加の許可の申請をした場合において、当該申請に係る診療所の所在地を含む地域 (医療計画において定める第三十条の四第二項第九号に規定する区域をいう。) における療養病床及び一般病床の数が、同条第五項の厚生労働省令で定める標準に従い医療計画において定める当該区域の療養病床及び一般病床に係る基準病床数に既に達しているか、又は当該申請に係る病床の設置若しくは病床数の増加によつてこれを超えることになると認めるときは、前条第四項の規定にかかわらず、同条第三項の許可を与えないことができる。
3 都道府県知事は、第一項各号に掲げる者が開設する病院 (療養病床等を有するものに限る。) 又は診療所 (前条第三項の許可を得て病床を設置するものに限る。) の所在地を含む地域 (医療計画において定める第三十条の四第二項第九号に規定する区域をいう。) における療養病床及び一般病床の数が、同条第五項の厚生労働省令で定める標準に従い医療計画において定める当該区域の療養病床及び一般病床に係る基準病床数を既に超えている場合において、当該病院又は診療所が、正当な理由がないのに、前条第一項若しくは第二項の許可に係る療養病床等又は同条第三項の許可を受けた病床に係る業務の全部又は一部を行つていないときは、当該業務を行つていない病床数の範囲内で、当該病院又は診療所の開設者又は管理者に対し、病床数を削減することを内容とする許可の変更のための措置を採るべきことを命ずることができる。
4 前三項の場合において、都道府県知事は、当該地域における既存の病床数及び当該申請に係る病床数を算定するに当たつては、第三十条の四第五項の厚生労働省令で定める標準に従い医療計画において定めるところにより、病院又は診療所の機能及び性格を考慮して、必要な補正を行わなければならない。
5 第一項から第三項までの場合において、都道府県知事は、当該地域における既存の病床数を算定するに当たつては、介護老人保健施設の入所定員数は、厚生労働省令の定めるところにより、既存の療養病床の病床数とみなす。
6 都道府県知事は、第一項若しくは第二項の規定により前条第一項から第三項までの許可を与えない処分をし、又は第三項の規定により命令しようとするときは、あらかじめ、都道府県医療審議会の意見を聴かなければならない。
7 独立行政法人 (独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。) のうち政令で定めるものは、病院を開設し、若しくはその開設した病院につき病床数を増加させ、若しくは病床の種別を変更し、又は診療所に病床を設け、若しくは診療所の病床数を増加させ、若しくは病床の種別を変更しようとするときは、あらかじめ、その計画に関し、厚生労働大臣に協議 (政令で特に定める場合は、通知) をしなければならない。その計画を変更しようとするときも、同様とする。
第八条 臨床研修等修了医師、臨床研修等修了歯科医師又は助産師が診療所又は助産所を開設したときは、開設後十日以内に、診療所又は助産所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない。
第八条の二 病院、診療所又は助産所の開設者は、正当の理由がないのに、その病院、診療所又は助産所を一年を超えて休止してはならない。ただし、前条の規定による届出をして開設した診療所又は助産所の開設者については、この限りでない。
2 病院、診療所又は助産所の開設者が、その病院、診療所又は助産所を休止したときは、十日以内に、都道府県知事に届け出なければならない。休止した病院、診療所又は助産所を再開したときも、同様とする。
第九条 病院、診療所又は助産所の開設者が、その病院、診療所又は助産所を廃止したときは、十日以内に、都道府県知事に届け出なければならない。
2 病院、診療所又は助産所の開設者が死亡し、又は失そうの宣告を受けたときは、戸籍法 (昭和二十二年法律第二百二十四号) の規定による死亡又は失そうの届出義務者は、十日以内に、その旨をその所在地の都道府県知事に届け出なければならない。
病院を開設するときは知事の許可が必要であるが、設備や人員が基準を満たしている場合は許可しなければならない。 ただし、営利目的の病院については第七条第五項で「許可を与えないことができる」とされている。 この規定は非営利原則と解釈されていて、戦前から営まれている特殊事例等を除いて、株式会社形式の病院は日本には存在しないようである。 第七条第五項では「厚生労働省令で定める」等の規定がないので、法令の形式上は知事の裁量次第となっている。 この点は、既存の国内企業を保護するために利用されているとして、内国民待遇の原則に反するものと解釈される余地はある。 しかし、日本の公的医療保険制度が内国民待遇の原則に反しない以上、その議論は机上の空論である。
診療報酬が安く抑えられているため、日本の保険医療機関は儲からないようになっている。 だから、営利目的の企業が日本の保険医療機関を開設したがるわけがない。 営利目的での開設があるとすれば自由診療機関に限られる。 しかし、現在でも、日本には、美容整形、科学的根拠に乏しい免疫療法、未承認医薬品等を扱う自由診療機関は存在する。 これらは、いずれも保険診療と競合しないものばかりであり、日本の公的医療保険制度に悪影響を及ぼす恐れはない。 現在の自由診療が日本の公的医療保険制度に悪影響を及ぼしているとする見解は、どこの団体も表明していない。 事実、混合診療に反対する日本医師会等も、自由診療そのものを潰そうとまではしていない。
仮に、営利目的の自由診療機関開設が日本の公的医療保険制度に悪影響を及ぼすとしても、法律の文面を明確にすれば良いだけである。 たとえば、「営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、前項の規定にかかわらず、保険医療機関の開設を除き、第一項の許可を与えてはならない」とすれば、内国民待遇の原則には反しない。 法改正の必要性はあるが、国民皆保険制度の崩壊や混合診療の解禁の危険性は全くない。
TPPが口実にされる危険性
日本にも、国民皆保険制度を潰したい勢力、混合診療を解禁したい勢力が存在するのは事実である。 そして、それらの勢力がTPPを口実に使おうと画策する危険性も確かにあろう。 しかし、だからこそ、TPPと公的保険制度が無関係であることを明確にする必要があるのである。
TPPが国民皆保険制度を潰し、混合診療を解禁させると言っている人達は、日本がTPPに参加した後はどうするのだろうか。 TPPは医療分野に限定しない経済全体の協定であるから、どんなに危機感を煽っても、医療分野の都合だけで参加を阻止することは難しい。 医療以外の分野において、TPP参加止むなしとなったらどうするのか。 あるいは、日本政府が反対意見を押し切って強引にTPPに参加したらどうするのか。 デマを流布する一派は、交渉に参加すれば脱退は出来ないと主張して「とりあえず交渉に参加してから態度を決めれば良い」とする意見を牽制している。 本当に脱退不可能なら、政府が交渉開始を強行したら、TPP参加を阻止することはできないはずである。 そうなった時にどうするのか。
TPPに参加したら、混合診療が解禁されても、全て止むなしと諦めるのか。 それとも、TPPの枠組みの中で国民皆保険制度を守ろうとするのか。 本気で国民皆保険制度を守りたいなら、前者の選択はあり得ない。 後者を選択するなら、明らかなダブルスタンダードである。 TPPの枠組みの中で国民皆保険制度を守れるなら、参加すれば制度が崩壊するとしていた主張と完全に矛盾する。 つまり、TPPの枠組みの中で国民皆保険制度を守るように方針転換することは、以前の主張がTPPお化けに過ぎなかったと認めるに等しい。 当然、抵抗勢力は、そのような二枚舌を厳しく追及してくるだろう。 「この前はTPPオバケで今度は公的医療保険オバケですか?その次は何オバケですか?」と。
前述の通り、TPPと公的医療保険は、本来、全くの無関係である。 だから、TPPに参加しても国民皆保険制度は潰せる道理はないし、国民皆保険制度を潰す口実にもなり得ない。 しかし、TPPお化けは、その論理が国民皆保険制度を潰す口実を認めているのだ。 つまり、TPPお化けこそが、国民皆保険制度を危機的状況に陥れかねないのだ。 本気で国民皆保険制度を守りたいなら、真っ先に懸念すべきことはTPP参加ではなくTPPお化けである。 TPPお化けの危険性はTPP参加の危険性よりも遥かに大きい。
PT総会では、これまでの疑問に回答する文書を政府側が配布。混合診療に関し「議論される可能性は排除されない」と説明したが、「議論されても、国民皆保険制度を維持し、必要な医療を確保する姿勢に変わりない」と慎重派に配慮した。
これは、サッカーの国際会議で野球ルールに関し「議論される可能性は排除されない」と言うのと変わらない。 いちいち採り上げるのもアホらしい可能性なのだから「初めて認め」るのは当たり前であろう。 もしも、そうした議論を持ち出されたら「この会議はサッカーの会議であって野球の会議ではない」と言えば済む。 TPPにおいて混合診療の話が出てくれば「サッカーの会議で野球の話をするのと同じ筋違いの議論」と言えば済む。 問うべきことは「議論される可能性」ではなく、そうした議論に対して筋違いだとの反論が通るかどうかである。
この政府答弁の問題点は「議論される可能性」ではなく、日本政府の「姿勢」ばかり強調して何が正論かを言わないことだ。 それを説明しないのでは、政府が正論を理解しているかどうか不安になる。 いや、分かっていて、故意に、混合診療を解禁する口実にTPPを利用しようとしているのかもしれない。 そうした横暴を阻止するためにも、TPPと公的保険制度が無関係であることを明確にする必要がある。
まとめ
TPP参加に賛否を論じるのは自由である。 しかし、難病患者を出汁にして、混合診療が解禁されるなどと根拠なきTPPお化けを持ち出されるのは甚だ迷惑である。
勘違い事例
日本の公的医療保険制度は内国民待遇の原則に反しないので、非関税障壁にあたらない。 だから、TPPにおいて日本の国民皆保険制度の廃止を求めたり、混合診療の解禁を求めるのは、全くの筋違いである。 筋違いの要求なら、断固とした態度で拒絶すれば良いだけである。
……なるほど。 ここで語られている内容が真実だとして、公的保険制度が非関税障壁に当たらないのであれば、その対応もしっかりと政府が出来ていると良いですね。
ちなみに医療自由化圧力こそが危惧すべきとありますが、そちらも注意するべきであって、TPPの場を使って平然と圧力をかけてくるのは予想できると思います。
医療自由化圧力はTPPに参加してもしなくても常に掛かっている。 TPPでは筋違いの要求になるが、その筋違いの要求に屈するなら、TPPに参加しなくても同じである。 以上、このページで説明済み。
日本の安価な薬価は、アメリカの医薬品輸入に対する非関税障壁には間違いなくなっているのですから。
「日本の安価な薬価」は非関税障壁ではない。 非関税障壁の定義はこのページにも辞書にも載っている。 どちらの定義のおいても、内国民待遇の原則に反しないものは非関税障壁ではない。
現在ペルーで行われているTPP交渉から流出した文書によると、アメリカはこの協定を利用して製薬会社の専売権を強化し、オーストラリアの薬剤給付制度(PBS)のような医薬品の償還制度の効力を弱めようとしていることが分かった。 週末に流出した文書には、「医療技術の透明性と手続き上の公正さ」に関する付属文書や、今年2月に流出した知的所有権の章の追加条項も含まれている。 付属文書には、医薬品を政府や消費者が支払える価格に設定する、PBSといった制度の効力を弱めるような条項がある。特に懸念されるのは、製薬会社に支払われる価格は参加諸国の「競争市場で得られた価格」、または特許取得製品の「価値を適切に評価する」その他の基準に基づかなければならない、という条項だ。
(訳文はどこかの誰か。おおむね間違ってないことだけは確認済み)
確かに、このサイトで言われるように、ISD条項とは無縁かもしれません。 が、TPPとは一緒にそういう圧力はかかってくるのですね。。。 なら、やっぱりTPPには反対するしかないじゃないですか。
訳文の正しさよりも情報の正しさを問うべきだろう。 見たところ、個人ブログのようなので、情報の真偽が不明である。 ISD条項などの事例を見れば、公的ソースのない情報は信用に値しない。
仮に事実だとしても、米国が何を要求したかだけを問うても意味がない。 オーストラリアにとっては、医療支出が増大しかねない要求であり、簡単に応じられることではないだろう。 真に考えるべきことは、協定の落とし所が何処になるかであって、特定の参加国が何を要求しているかではない。
医療自由化圧力はTPPに参加してもしなくても常に掛かっていることは既に述べたとおりである。
尚、デマを流布する一派には米韓FTAによって韓国の公的医療保険が崩壊させられるとする主張もあるが、それも真実かどうか疑わしい。
しかし、医療費の高騰のなかで、各国は保険で面倒をみる医薬品を評価決定するシステムを定めたり、また全額を保険償還するのでなく、その医薬品の重要性に応じて保険償還する割合を決定するシステムを定めている。 保険償還する医薬品を定めるのが「ポジティブリスト・システム」、保険償還しない医薬品を定めるのが「ネガティブリスト・システム」である。 これらは、「医療費の抑制」と「医療の質の向上」を同時にはかる方法としても機能している。
隣国の韓国政府は、昨年6月、同国の保険システムにこの「ポジティブリスト・システム」を導入することを発表、これに対し製薬企業から強い反対の声が上がっていた。 また、米国も新薬の輸入に対する非関税障壁となり自由貿易に反するとしてこれに疑念を表明、米韓両国の自由貿易協定(FTA)交渉がこのことで一時中断するという事態ともなっていた。 その後、米国は韓国の「ポジティブリスト・システム」を是認する方向に態度を修正、政府は製薬企業との交渉に入っていた。
これが事実なら、韓国は、自国政府の財政上の都合で保険を縮小しようとしたのである。 そして、米国は、韓国の保険縮小に反対したということになる。
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